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動物虐待は「放置」も対象——英国で世話を怠った飼い主に飼育禁止2年、日本の罰則と通報先

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動物虐待は「放置」も対象——英国で世話を怠った飼い主に飼育禁止2年、日本の罰則と通報先

英国の裁判所は2026年10月20日、犬2頭と猫2頭の世話を怠った飼い主に、犬と猫を2年間飼うことを禁じる命令を出しました。日本の動物愛護法でも、世話をせずに放置することは動物虐待にあたります。

近所で、世話をされていないように見える犬や猫が気になっている人へ。英国で何があったのか、日本では放置がどんな罪になるのか、見かけたらどこへ知らせればよいのかを、条文と国の資料からまとめました。

本記事の情報源

英国の動物福祉団体RSPCAが2026年10月29日に公表した発表、イングランドとウェールズの動物福祉法(Animal Welfare Act 2006)の条文、日本の動物愛護法の条文と環境省・警察庁の資料をもとに、日本の読者向けにまとめています。

原文:Former GP sentenced for allowing cats and dogs to live in squalor(RSPCA、2026年10月29日)

執筆:ペトログ編集部

目次
  1. 英国で、犬・猫の世話を怠った飼い主に「飼育禁止2年」
  2. 英国の動物福祉法では、世話をしないこと自体が罪になる
  3. 日本の動物愛護法でも、犬・猫の放置(ネグレクト)は動物虐待
  4. 日本には、罰を受けた飼い主に犬や猫の飼育を禁じる決まりがない
  5. 放置されている犬・猫を見かけたら——動物虐待の通報先
  6. さいごに

英国で、犬・猫の世話を怠った飼い主に「飼育禁止2年」

英国の動物福祉団体RSPCA(王立動物虐待防止協会)の発表によると、イングランド北東部のダラム州に住む女性が、飼っていたドーベルマン、ボルゾイ、猫2頭の計4頭について、動物に必要なもの(needs)を満たさず、適切な環境を与えなかったことを認めました。ティーズサイドの治安判事裁判所(Teesside Magistrates)は10月20日、犬と猫の飼育を2年間禁じる命令と、15か月の社会内処遇命令(community order。刑務所に入らず、地域で条件を守りながら受ける刑)を言い渡しています。

RSPCAの査察官が2月に家を訪ねたとき、居間のわずかな場所を除いて、床一面がごみやふん尿で覆われていました。RSPCAは以前にも注意しており、いったんは改善したものの、その後また悪くなっていたといいます。動物たちと家の映像・写真を確かめた獣医師も、動物たちは苦しんでいる、または今の状況が変わらなければ苦しむおそれがあると判断しました。4頭は飼い主がRSPCAに引き渡し、猫2頭とドーベルマンはすでに新しい家族に迎えられています。ボルゾイは数か月のリハビリを経て、迎える家族が決まりました。

出典:RSPCA(2026年10月29日発表)

英国の動物福祉法では、世話をしないこと自体が罪になる

イングランドとウェールズの動物福祉法は、動物の世話をする人に、その動物に必要なものを満たすための合理的な手立てをとるよう求めています(第9条)。必要なものとして条文が挙げるのは、次の5つです。

  • 適切な環境
  • 適切な食事
  • ふつうの行動ができること
  • ほかの動物と一緒に、または離して飼うこと
  • 痛み、苦しみ、けが、病気から守られること

この手立てをとらないこと自体が罪になり、動物がけがや病気になっていなくても罪に問えます。そして有罪になった人に、裁判所は飼育禁止の命令を出せます(第34条)。対象の罪には、不必要な苦痛を与える罪(第4条)だけでなく、世話の義務に反する罪(第9条)も含まれます。禁止の中身は、次のとおりです。

  • 禁じられること:動物を所有する、飼う、飼うことに関わる、取引する、運ぶ、運ぶ手配をする、の中から裁判所が選ぶ(今回は犬と猫を飼うことの禁止)
  • 対象の動物:動物全般にも、特定の種類だけにも出せる(今回は犬と猫)
  • 期間:裁判所が適当と考える期間。法律に上限や下限の年数は書かれていない
  • 取り消しの申し立て:命令の日から1年たつまではできない。裁判所がそれより長い期間を決めることもある(第34条・第43条)
  • 命令に違反すると、それ自体が罪になる

RSPCAの起訴の年次報告によると、2018年にイングランドとウェールズで、この法律により個人に出された飼育禁止命令は651件でした。不必要な苦痛を与える罪などの最高刑は、2021年6月29日以降の行為について、5年の拘禁刑です。スコットランドと北アイルランドにも、別の法律で同じような仕組みがあります。

出典:Animal Welfare Act 2006 第4条・第9条・第34条・第43条・第32条、Animal Welfare (Sentencing) Act 2021、RSPCA「Prosecutions Annual Report 2018」、Animal Health and Welfare (Scotland) Act 2006 第40条、Welfare of Animals Act (Northern Ireland) 2011 第33条

日本の動物愛護法でも、犬・猫の放置(ネグレクト)は動物虐待

環境省は、動物虐待には暴力のような行為だけでなく、「必要な世話を怠ったりケガや病気の治療をせずに放置したり、充分な餌や水を与えないなど、いわゆるネグレクトと呼ばれる行為も含まれます」と説明しています。

動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)の第44条第2項が虐待として挙げる行為には、次のようなものがあります。

  • みだりに、えさや水を与えるのをやめたり、健康と安全を保つのが難しい場所に拘束したり、ひどく過密な状態で飼ったりして、弱らせること
  • 病気やけがをした自分の動物を、適切に保護しないこと
  • ふん尿がたまった場所や、ほかの動物の死体が放置された場所で飼うこと

これらの虐待は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。動物をみだりに殺したり傷つけたりすれば、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金になります。英国の件のように、ふん尿やごみが積もった家で犬や猫を飼い続けることは、日本でも虐待にあたりえます。警察庁によると、2025年に動物愛護法第44条の違反(殺傷・虐待・遺棄)で検挙された動物虐待事件は172件、検挙された人は213人でした。

出典:環境省「虐待や遺棄の禁止」、e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(第44条)、警察庁「令和7年における生活経済事犯の検挙状況等について」

日本には、罰を受けた飼い主に犬や猫の飼育を禁じる決まりがない

英国と日本の決まりを比べると、次のようになります。

項目英国(イングランド・ウェールズ)日本
世話をしないこと世話の義務に反すると罪になる(第9条)放置して弱らせる、ふん尿がたまった場所で飼うなどは虐待として罪になる(第44条第2項)
罰則不必要な苦痛を与える罪(世話をせずに苦しめた場合も含む)などは最長5年の拘禁刑または罰金。世話の義務違反(第9条)は、それより短い拘禁刑または罰金殺傷は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金。放置などの虐待は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
有罪になった人の飼育裁判所が飼育禁止を命じられる。期間は裁判所が決める犬・猫などの飼育を禁じる規定はない

注:英国の欄は Animal Welfare Act 2006 第4条・第9条・第32条・第34条、日本の欄は動物愛護法 第12条・第27条・第44条ほかによる。

行政にできるのは、改善を求めることです。都道府県知事は、飼い方が適正でないために動物が衰弱するなど、虐待を受けるおそれがあるとき、改善に必要な措置を命じたり勧告したりできます(第25条第4項。命令に違反すると50万円以下の罰金)。条文にあるのは「必要な措置」で、飼うこと自体を禁じる言葉はありません。環境省の対応ガイドラインは、ふん尿の片付けなど直接の改善で解消しない場合に「頭数の削減を命じることは考え得る」としています。

動物愛護法違反で罰金以上の刑を受けた人は、刑の執行が終わるなどしてから5年間、ペットショップやブリーダーなどの仕事(第一種動物取扱業)に登録できません(第12条)。ただ、これは仕事の制限で、個人で飼うことは止められません。危険な動物(特定動物)の飼養許可も2年間受けられなくなりますが(第27条)、犬や猫はこの許可の対象外です。環境省の多頭飼育対策ガイドラインにも、自治体が「飼い主に対して動物の所有権を強制的に放棄させることも認められていません」とあります。

韓国では、重大な虐待をした人に裁判所が最長5年の飼育禁止を命じられるようにする改正動物保護法が、2026年10月27日に公布されました(施行は2027年10月28日)。ペトログは、韓国の改正を伝えた記事でも書いたとおり、日本にも、虐待した人の手に次の動物が渡らないようにする仕組みが必要だと考えます。英国の件は、その対象を重大な虐待に限らず、世話を怠った場合まで含めている例です。

出典:e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(第12条・第25条・第27条・第46条の2)、韓国農林畜産食品部(2026年10月26日の報道資料)、環境省「動物虐待等に関する対応ガイドライン」、環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」

放置されている犬・猫を見かけたら——動物虐待の通報先

環境省は、愛護動物の虐待などを見つけたときは、「発見場所の地方自治体(都道府県・指定都市・中核市)の連絡先もしくは警察(緊急時には110番)に相談または通報してください」と呼びかけています。虐待だとはっきり言えなくても、そのおそれがあれば自治体に相談できます。

各地の連絡先は、環境省の「地方自治体動物虐待等通報窓口一覧」にまとまっています。

地方自治体動物虐待等通報窓口一覧都道府県・指定都市・中核市ごとに、動物の虐待などを相談・通報できる連絡先をまとめた環境省のページです。環境省

出典:環境省「地方自治体動物虐待等通報窓口一覧」

さいごに

英国の件は、殴ったり傷つけたりしなくても、世話を怠れば罪になり、その先の飼育まで止められることを示しています。日本でも放置は動物虐待ですが、罰を受けたあとに犬や猫を飼うことを止める仕組みは、まだありません。

近くで弱っていく動物を見かけたら、ひとりで抱え込まずに、自治体か警察に相談してください。

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