野良猫のTNR、ドイツの獣医師の76%が非常に効果的と回答——日本の飼い主に繁殖制限の義務
2026年10月15日、動物保護団体Humane World for Animals Germanyは、ドイツの獣医師207人調査で76%が野良猫のTNR(捕獲・不妊去勢手術・元の場所に戻す活動)を非常に効果的と回答したと発表しました。
外で暮らす猫を見かけて、増え続ける猫をどうすれば減らせるのか気になった方も多いのではないでしょうか。この記事では、ドイツの調査結果と団体の要望、そして日本の法律が猫の飼い主に求めていることを、詳しく分かりやすく解説します。
ポイントは2つです。1つは、ドイツの獣医師の多くがTNRの効果を認めつつ、不妊去勢率と資金の不足を課題に挙げたこと。もう1つは、日本では動物愛護法が、犬と猫の飼い主に繁殖制限の措置を義務づけていることです。
執筆:ペトログ編集部
本記事の情報源
Humane World for Animals Germanyが2026年10月15日に公表したプレスリリースと、同団体の調査報告書(ドイツ語)をもとに、事実を一次情報で確認したうえで、ペトログ編集部が日本の読者向けに独自の解説を加えて構成しています。
原文:Germany's veterinarians unite behind TNR and mandatory sterilization to manage street cat crisis
この記事でわかること
- ドイツの獣医師207人調査で、TNRの効果と課題がどう回答されたか
- 外に出る飼い猫の不妊去勢・識別・登録を全国で義務づける、ドイツの猫保護令とは何か
- 日本の動物愛護法と環境省の基準が、猫の飼い主に求めていること
目次
ドイツの獣医師207人調査、76%がTNRを非常に効果的と回答
Humane World for Animals Germanyは2026年10月15日、ドイツの獣医師を対象にした調査の結果を公表しました。調査は2025年10月から2026年3月にかけてオンラインで行われ、約6,000人の獣医師に送られて、14の州から207人が回答しています。
野良猫を減らす方法としてのTNRについて、回答者の76%が非常に効果的(highly effective)、18%がある程度効果的(moderately effective)と答え、効果がないと答えた人はいませんでした。一方で、78%が自分の地域では不妊去勢率の不足がTNRの効果を限定的にしていると答え、68%が資金不足を大きな問題だと回答しています。
また、65%は、政府や団体からの補助金があればTNRへの参加が「definitely」(確実に)または「probably」(おそらく)増えると答えました。なお、団体の報告書は、回答率が3.5%で、この調査が任意参加によるもので、ドイツの獣医師全体を代表するものではないとしています。
出典:Humane World for Animals Germany「Germany's veterinarians unite behind TNR and mandatory sterilization to manage street cat crisis」(2026年10月15日発表)/Humane World for Animals Deutschland「TNR in Deutschland: Was Tierärzt*innen leisten, erleben und benötigen」(調査報告書PDF、ドイツ語、2026年)
TNRとは
Trap(捕獲)・Neuter(不妊去勢手術)・Return(元の場所に戻す)の頭文字です。飼い主のいない猫を捕まえて手術をし、元の場所に戻すことで、その場所で新しい子猫が生まれないようにする活動を指します。
団体が求めるのは、外に出る「飼い猫」の不妊去勢・識別・登録の全国ルール
調査で回答者から最も多く挙がった要望は、ドイツ全国で統一した「猫保護令」(Katzenschutzverordnung)の導入でした。プレスリリースはこれを、外に出る飼い猫(free-roaming owned cats)の不妊去勢・識別・登録の要件をドイツ全国でそろえる決まりと説明しています。つまり、対象は野良猫ではなく、外に出る飼い猫です。
団体の報告書によると、猫保護令は、定められた地域で外に出る猫を飼う人に、不妊去勢手術・マイクロチップによる識別・登録を義務づけるものとされています。ただし、発表時点では自治体または州ごとの定めにとどまり、全国で統一された決まりはない、というのが団体の説明です。
そのほか調査では、解決策として、安定した公的資金、獣医師向けの研修、獣医師・動物保護団体・自治体の連携強化、全国統一のTNRの臨床ガイドラインが挙がりました。団体自身も報告書の提言で、外に出る飼い猫の不妊去勢と識別を義務づける全国の猫保護令の導入、公的資金の確保、全国のTNRガイドラインの策定と研修を挙げています。
出典:Humane World for Animals Germany「Germany's veterinarians unite behind TNR and mandatory sterilization to manage street cat crisis」(2026年10月15日発表)/Humane World for Animals Deutschland「TNR in Deutschland: Was Tierärzt*innen leisten, erleben und benötigen」(調査報告書PDF、ドイツ語、2026年)
日本ではどうなっているか——猫の飼い主には「繁殖制限の義務」がある
日本では、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)が、犬と猫の飼い主に繁殖制限の措置を義務づけています。第37条第1項は、犬や猫の飼い主(条文では「所有者」)は、これらの動物が「みだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置を講じなければならない」という規定です。
環境省は、2019年(令和元年)6月19日に公布された法改正の内容として、この条文を「犬及び猫の繁殖制限の義務化」と説明しており、施行は2020年6月1日です。条件に当てはまる場合に、不妊去勢手術などの措置は「講じなければならない」義務となっています。
出典:e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号)/環境省「令和元年に行われた法改正の内容」
ドイツの団体の要望と、日本の現行の決まりを並べると、次の表のようになります。
| 項目 | ドイツ(団体の発表から) | 日本(現行の法律・基準) |
|---|---|---|
| 外に出る飼い猫の不妊去勢 | 猫保護令がある自治体・州では、外に出る猫を飼う人に不妊去勢手術を義務づけている。全国で統一した決まりはなく、団体が全国ルールの導入を要望 | みだりに繁殖して適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるおそれがあると認める場合、生殖を不能にする手術その他の措置を講じなければならない(法第37条第1項、犬も同じ)。環境省の基準では、屋内飼養によらない猫は去勢手術・不妊手術等の繁殖制限の措置を講じる |
| 飼い猫のマイクロチップと登録 | 猫保護令がある地域では、外に出る猫にマイクロチップによる識別と登録を義務づけている(団体の報告書の説明) | 装着は犬猫等販売業者に義務、それ以外の飼い主は努力義務(法第39条の2)。装着した日から30日以内に環境大臣の登録を受ける(法第39条の5、犬も同じ) |
| 猫の屋内飼養 | 今回の発表に記載なし | 環境省の基準で、猫の飼い主(基準では「所有者等」)は「屋内飼養に努めること」とされ、屋内飼養以外の場合は、周辺住民の生活に著しい支障を及ぼさないよう努める |
| 飼い主のいない猫への対応 | 団体が2024年からシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州でTNRを支援(2025年に他の州へ拡大)。調査では獣医師の76%がTNRを非常に効果的と回答し、団体は報告書の提言で公的資金の確保を挙げている | 環境省の基準で、飼い主のいない猫を管理する場合は、不妊去勢手術を施して周辺住民の理解の下に給餌・給水や排せつ物の処理などを行う「地域猫対策」など、周辺の生活環境と引取り数の削減に配慮した管理に努める。環境省が2010年3月に公表した「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」にも「地域猫」の章がある |
注:ドイツの欄はHumane World for Animals Germanyの2026年10月15日のプレスリリースと調査報告書、日本の欄はe-Gov法令検索の「動物の愛護及び管理に関する法律」(2026年10月17日確認)、環境省告示「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(最終改正:令和4年環境省告示第54号。第3の4、第5の2・3・6)、環境省報道発表「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドラインの策定について」(2010年3月11日)とその別紙「ガイドラインの構成概要」による。
日本では飼い主不明の子猫の引取りが年1万匹を超えている
環境省の統計によると、2024年4月1日から2025年3月31日までの1年間に、全国の都道府県・指定都市などが引き取った猫は22,010匹でした。このうち飼い主不明の猫は13,688匹で、その大半の11,062匹が、主に離乳前の幼齢の個体です。
同じ期間に猫の譲渡は16,854匹、返還は225匹で、殺処分は4,866匹でした。環境省の統計の注記では、幼齢の個体とは主に離乳していない個体を指すとしています。
出典:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」(令和6年度)
犬の飼い主に関わる点
今回の調査は猫が対象ですが、日本の動物愛護法の繁殖制限の義務(第37条第1項)は「犬又は猫の所有者」が対象で、犬の飼い主にも同じ義務があります。マイクロチップの装着(販売業者は義務、それ以外の飼い主は努力義務)と、装着後30日以内の登録も、犬と猫で共通の決まりです。
出典:e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号)
飼い主さんが今できること
- 愛猫が外に出る場合は、環境省の基準で去勢手術・不妊手術などの繁殖制限の措置を講じることとされています。手術の時期や方法は、かかりつけの動物病院で相談してください。
- 愛犬・愛猫にマイクロチップが入っている場合は、登録(装着した日から30日以内)が済んでいるかを、環境省の登録サイトで確かめましょう。なお、保護猫を迎えてチップが入っていない場合、装着は努力義務です(手続きの流れは猫のマイクロチップの記事で紹介しています)。
- 近所の飼い主のいない猫で困っているときは、お住まいの保健所・動物愛護センター(自治体)や地域の保護団体に、地域猫活動の相談先があるかを聞いてみる方法があります。
まとめ
野良猫のTNRについて、ドイツの獣医師207人調査では76%が非常に効果的と回答し、回答者から最も多く挙がった要望は、外に出る飼い猫の不妊去勢・識別・登録を全国で義務づける猫保護令でした。日本では動物愛護法が犬と猫の飼い主に繁殖制限の措置を義務づけ、環境省の基準は猫の屋内飼養に努めることを求める内容です。続報があれば追記します。
動物愛護法の罰則と飼い主の義務を確認する
繁殖制限やマイクロチップを含む飼い主の義務と罰則は、動物愛護法とは|罰則と飼い主の義務をわかりやすく解説で一つずつ確認できます。
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出典
- Humane World for Animals Germany「Germany's veterinarians unite behind TNR and mandatory sterilization to manage street cat crisis」(2026-10-17確認)
- Humane World for Animals Deutschland「TNR in Deutschland: Was Tierärzt*innen leisten, erleben und benötigen」(調査報告書PDF、ドイツ語)(2026-10-17確認)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号)(2026-10-17確認)
- 環境省「令和元年に行われた法改正の内容」(2026-10-17確認)
- 環境省告示「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号、最終改正:令和4年環境省告示第54号)(2026-10-17確認)
- 環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」(2026-10-17確認)
- 環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドラインの策定について(お知らせ)」(2026-10-17確認)
- 環境省「ガイドラインの構成概要」(別紙PDF)(2026-10-17確認)
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