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米ペンシルベニア州「ビーグル法案」が議会通過——実験犬・実験猫に譲渡の機会、日本との違いは

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米ペンシルベニア州「ビーグル法案」が議会通過——実験犬・実験猫に譲渡の機会、日本との違いは

米ペンシルベニア州議会は2026年10月20日、研究を終えた犬猫に譲渡の機会を与える「ビーグル法案」(SB 381)の手続きを終え、法案は知事の署名待ちになりました。この記事では、法案の中身と日本の決まりとの違いを解説します。

実験に使われた犬や猫(実験犬・実験猫)が研究のあとどうなるのか、考える機会はあまりありません。アメリカでは2014年のミネソタ州を最初に、研究を終えた犬猫に家庭で暮らす機会を与える州法が広がってきました。この法案が成立すれば、ペンシルベニア州はこうした法律を持つ18番目の州になります。

押さえておきたいのは、この法案が「すべての犬猫を譲渡せよ」という決まりではなく、安楽死の前に譲渡の機会を設けるよう施設に求める仕組みだという点です。一方、日本の動物愛護法と環境省の基準には、実験を終えた動物を家庭に譲渡する決まりがありません。

本記事の情報源

ペンシルベニア州上院共和党が2026年10月20日に公表した発表と、州議会の公式データを掲載するLegiScan(レジスキャン)の経過表・法案本文をもとに、事実を一次情報で確認したうえで、ペトログ編集部が日本の読者向けに独自の解説を加えて構成しています。

原文:Mastriano, Comitta Bill to Protect Animals from Painful Experimentation Almost Law

執筆:ペトログ編集部

この記事でわかること

  • 研究を終えた犬猫について、法案で何が決まるのか
  • 化粧品の動物実験の決まりと、知事の署名までの流れ
  • 日本の法律と国の基準は、実験を終えた動物をどう扱っているか
目次
  1. 米ペンシルベニア州のビーグル法案、上院50対0・下院203対0で議会を通過
  2. 法案の中身——研究を終えた犬猫に、30日以上の譲渡の機会
  3. この法案の経過と、知事の署名のルール
  4. 背景の一つ:バージニア州の繁殖施設から約4,000頭のビーグルが譲渡へ
  5. 日本ではどうなっているか——実験を終えた動物を家庭に譲渡する決まりはない
  6. ペトログ編集部の視点
  7. よくある質問
  8. まとめ
  9. この先の注目点

米ペンシルベニア州のビーグル法案、上院50対0・下院203対0で議会を通過

州議会の上院は2025年9月10日、SB 381を50対0で可決しました。下院は修正を加えて2026年10月19日に203対0で可決し、翌20日、上院がその修正に50対0で同意しています。法案を出したのは、ダグ・マストリアーノ(Doug Mastriano、共和党)とキャロリン・コミッタ(Carolyn Comitta、民主党)の両上院議員ら、超党派の16人です。

出典:LegiScan「PA SB381 | 2025-2026 | Regular Session」

上院共和党は、成立すればペンシルベニア州が「the 18th state to grant dogs and cats an opportunity to be adopted into a loving home」(犬や猫に、愛情ある家庭に迎えられる機会を与える18番目の州)になると発表しました。こうした州法は、動物保護団体ビーグル・フリーダム・プロジェクト(Beagle Freedom Project)と、ミシガン州立大学ロースクールの動物法サイトの集計で、2026年時点で17州にあります。ビーグル・フリーダム・プロジェクトによると、最初は2014年のミネソタ州でした。

出典:ペンシルベニア州上院共和党「Mastriano, Comitta Bill to Protect Animals from Painful Experimentation Almost Law」(2026年10月20日発表)/Beagle Freedom Project「State Beagle Bill」/Animal Legal & Historical Center(ミシガン州立大学ロースクール)「Map of Beagle Freedom Laws」

17州が法律をつくった順に並べると、2015年と2018年にそれぞれ3州が続き、その後もほぼ毎年1州ずつ増えてきたことが分かります。

成立州主な特徴・出来事
2014年5月ミネソタ全米で最初の州
2015年6月ネバダ通称「カルビン法」。大学だけでなく、民間の研究施設も対象
2015年7月コネチカット公立・私立の大学が対象。2025年の改正で、ウサギ・モルモット・フェレットにも広げた
2015年10月カリフォルニア公立大学と、私立の非営利の大学が対象
2016年8月ニューヨーク法律の名前は「研究動物引退法」。公的資金を受ける大学の研究施設などが対象
2017年8月イリノイ施設に、譲渡の方針をウェブサイトに載せることを求める
2018年4月メリーランド大学だけでなく、医療研究や製品試験の施設も対象
2018年6月デラウェア施設に、譲渡団体やシェルターと協定を結ぶことを求める
2018年7月ロードアイランド上院と下院の同じ内容の法案が、両方とも成立
2019年4月ワシントン通称「動物ヒーローに家を法」。上院・下院とも全会一致
2019年6月オレゴン民間の研究施設に、州への年次報告を求める
2020年1月ニュージャージーワシントンと同じ「動物ヒーローに家を法」の名前
2021年3月バージニア施設に譲渡の申し出を義務づけ。2022年の改正で、実験用の犬猫の繁殖業者にも広げた
2022年5月アイオワ州立大学を含む研究施設に、譲渡プログラムをつくることを求める
2022年8月マサチューセッツ施設に、譲渡先の評判や犯罪歴などの確認を求める
2023年12月ミシガン通称「テディ法」。殺菌剤の試験に使われ、のちに譲渡されたビーグル「テディ」にちなむ
2025年4月コロラド健康に関わる研究で動物を使う施設が対象。州農務省への年次報告を求める
2026年(知事の署名待ち)ペンシルベニア成立すれば18番目の州

注:「成立」は各州の知事が署名(承認)した年月(ロードアイランドは州の法律ページの成立日)。17州の範囲はミシガン州立大学ロースクール Animal Legal & Historical Center の集計で、成立の年月と特徴は各州の州議会・州法の公式ページで確かめました(イリノイとバージニアの年月は、州議会の公式データを掲載するLegiScanで確認)。ミシガンの「テディ」の由来は米WGVUの報道(2023年12月21日)による。2026年10月21日確認。

出典:Animal Legal & Historical Center(ミシガン州立大学ロースクール)「Map of Beagle Freedom Laws」/WGVU「Teddy's Law provides research animals adoption」(2023年12月21日)

法案の中身——研究を終えた犬猫に、30日以上の譲渡の機会

譲渡の決まりの対象は、民間の施設や州の機関、大学などを含め、犬や猫を研究や試験に使う施設です。安楽死を必要としない研究を終えた犬猫について、安楽死させる前に30日以上、譲渡の申し出を続けることが求められます。

譲渡に向くかどうかを判断する唯一の権限を持つのは、施設の担当獣医師です。譲渡先は、州の法律で定める譲渡団体(releasing agency)か、施設の譲渡プログラムを通じた個人・職員のどちらかとなります。

一方で法案には「Nothing in this paragraph shall be construed to require euthanizing an animal subject.」(この規定を、動物の安楽死を求めるものと解釈してはならない)という一文もあり、善意で譲渡した施設は、その後の損害などの責任を負わないことも定めました。

出典:SB 381 法案本文(最終印刷番号 PN 1972、LegiScan掲載、PDF)

法案には、譲渡のほかにも次のような決まりがあります。

項目法案の中身
犬猫を使う研究への州の資金書面による科学的な正当化(種の選び方・頭数を含む)、研究機関の動物実験委員会(IACUC)の審査・承認、担当獣医師の監督などの条件を満たす研究に限って使える
情報の公開州の資金を受けて動物を研究に使う施設は、米農務省動植物検疫局(APHIS)の公開検索ツールへのリンクを、自施設のサイトの分かりやすい場所に載せる
犬猫の販売連邦の動物福祉法で一定の違反を指摘された者が繁殖させた犬猫を、業者・犬舎が研究目的を含めて販売することを禁止
動物実験をした化粧品2027年1月1日以降に行った動物実験で開発・製造された化粧品の州内での販売を禁止(例外あり)
違反したとき州司法長官が裁判所に民事訴訟を起こせる。罰金の金額の定めはなく、個人が訴える権利もない

注:法案本文(最終印刷番号 PN 1972、LegiScan掲載)からペトログ編集部が要約。2026年10月21日確認。

化粧品は「2027年1月1日以降の動物実験」が対象

化粧品の決まりでは、メーカーは、2027年1月1日以降に行われた動物実験で開発・製造された化粧品を州内で売れなくなります。医療研究を目的とした研究や、規制当局が求める試験(条件つき)などは例外です。

動物保護団体ヒューメイン・ワールド・フォー・アニマルズ(Humane World for Animals、旧・米国人道協会)の集計では、動物実験をした化粧品の販売を禁じる法律を可決した州は12州、化粧品の動物実験を禁止している国はEUの全加盟国を含む45か国にのぼります。ペンシルベニア州上院共和党の発表も、同じような法律を持つ州は12州、国は45か国あるとしています。

出典:SB 381 法案本文(最終印刷番号 PN 1972、LegiScan掲載、PDF)/Humane World for Animals「Cosmetics animal testing FAQ」

この法案の経過と、知事の署名のルール

議会での手続きは終わり、残るのは知事の署名です。これまでの流れと、これからの予定を表にまとめました。

日付出来事票数(賛成-反対)
2025年3月6日上院の司法委員会に付託―
2025年9月10日上院が可決50-0
2026年10月19日下院が修正のうえ可決203-0
2026年10月20日上院が下院の修正に同意(議会での手続きが終了)50-0
未定知事の署名―
未定(成立から180日後)施行―
2027年1月1日化粧品の決まりの基準日(この日以降に行われた動物実験が対象)―

注:2026年10月21日時点。州議会の公式データを掲載するLegiScanの経過表・採決表と、法案本文(最終印刷番号 PN 1972)による。

ペンシルベニア州の憲法(第4条第15項)では、法案は知事に提示されてから10日以内に差し戻されなければ、知事が署名したのと同じように法律になります。議会の休会で差し戻せない場合は、休会後30日以内に知事が異議を州務長官に出して公告しない限り法律になり、知事が拒否しても、各院の選出議員の3分の2の賛成で覆せるという定めです。

署名の期限は法案が知事に届いた日から数えるため、日付はまだ分かりません。2026年10月21日時点で、知事による署名・拒否は報じられていない状況です。

出典:50constitutions.org「ペンシルベニア州憲法 第4条第15項(法案の承認・拒否)」/LegiScan「PA SB381 | 2025-2026 | Regular Session」

背景の一つ:バージニア州の繁殖施設から約4,000頭のビーグルが譲渡へ

米国の報道機関Erie News Now(イーリー・ニュース・ナウ)によると、この法案の元をたどると、2022年にライアン・ビザロ(Ryan Bizzarro)州下院議員が出した動物福祉の法案の一群に行き着きます。きっかけは、連邦政府の調査を受けたバージニア州の研究用の繁殖施設の問題でした。記事は施設の名前を挙げていませんが、同じ2022年に米司法省が動いたバージニア州の施設に、研究用の動物を繁殖・販売するエンビゴ(Envigo RMS)のカンバーランドの施設があります。米司法省は、この施設で動物福祉法の違反が広く続いていたと指摘しています。

同年7月の連邦地裁の同意判決で、エンビゴはこの施設で免許が必要な活動をやめることに同意しています。残っていた約4,000頭のビーグルは、米国人道協会(現在のHumane World for Animals)が移送を調整し、譲渡へとつながりました。

出典:米司法省の発表(Press Release 22-763、2022年7月18日)/米司法省「United States v. Envigo RMS, LLC et al.」/Erie News Now「Animal Testing Reform Bill Heads to Governor Shapiro's Desk」(2026年10月20日)

日本ではどうなっているか——実験を終えた動物を家庭に譲渡する決まりはない

日本で実験動物の扱いを定めているのは、動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)の第41条です。代わりの方法を使うこと、使う数をできるだけ少なくすること、できる限り苦痛を与えない方法をとることを求め、第3項で次のように定めています。

「動物が科学上の利用に供された後において回復の見込みのない状態に陥つている場合には、その科学上の利用に供した者は、直ちに、できる限り苦痛を与えない方法によつてその動物を処分しなければならない。」実験のあと健康な状態に戻った動物を家庭に譲ることについては、法律に規定がありません。

出典:e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号)

環境省の「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」も同じです。実験を終えた動物についての「事後措置」は「殺処分する場合」の方法を定めた項目で、「譲り渡す」という言葉は、施設を閉じるときの扱いに出てきます。その譲り先も、一般の家庭ではなく「他の施設」です。

出典:環境省「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年環境省告示第88号)/東北大学 動物実験センター公開の法令集(同基準の現行版、最終改正:平成25年環境省告示第84号、PDF)

化粧品の動物実験を禁止する規定も、日本の法律には見当たりません。ペンシルベニア州の法案と並べると、次のようになります。

項目ペンシルベニア州(SB 381)日本(動物愛護法・環境省の基準)
実験を終えた犬猫の家庭への譲渡安楽死を必要としない研究を終えた犬猫について、安楽死の前に30日以上、譲渡の機会を設ける家庭へ譲渡する決まりはない
実験を終えた動物の扱い譲渡に向くかどうかは施設の担当獣医師が判断。安楽死を求める規定ではない回復の見込みのない動物は、できる限り苦痛を与えない方法で処分(法第41条第3項)。基準の「事後措置」は殺処分する場合の方法を定める
譲り先の決まり譲渡団体、または施設の譲渡プログラムを通じた個人・職員施設を閉じるとき、ほかの施設へ譲り渡すよう努める(基準 第3の7)
化粧品の動物実験2027年1月1日以降の動物実験で開発・製造された化粧品の州内販売を禁止(例外あり)法律で禁止する規定は見当たらない

注:ペンシルベニア州の欄は法案本文(最終印刷番号 PN 1972)、日本の欄はe-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」と、環境省「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(最終改正:平成25年環境省告示第84号。第3の7、第4の1(2))による。化粧品の日本の欄は、同法第41条と、Humane World for Animals「Cosmetics animal testing FAQ」の国の集計に日本が含まれていないことから、編集部が判断しました。2026年10月21日確認。

ペトログ編集部の視点

ペトログ編集部は、実験を終えた犬猫にも家族と暮らす道を開く、という考え方を支持します。研究が終わって健康な犬猫でも、譲渡の機会がなければ、そのまま処分されることがありうるためです。

研究のあり方とは別に、研究を終えたあとの命の扱いは、決まりがあるかどうかで大きく変わります。ペンシルベニア州の法案は、そのことを示す一つの例です。

保護犬・保護猫を迎えようと考えている方に、知っておいてほしいことがあります。迎える選択肢の中に、研究を終えた犬や猫もいる国がある、ということです。保護猫とどこで出会い、どう迎えるかは、保護猫とは|どこで出会えて、どう迎える?で紹介しています。

よくある質問

Q. 化粧品の動物実験が禁止されている国はありますか?

A. はい、あります。動物保護団体Humane World for Animalsの集計では、化粧品の動物実験を禁止している国は45か国です。アメリカでは国ではなく州ごとに法律があり、動物実験をした化粧品の販売を禁じる法律を可決した州は12州あります。日本は、この45か国に入っていません。

Q. EUでは、化粧品の動物実験は禁止されていますか?

A. はい、禁止されています。動物保護団体Humane World for Animalsの集計では、化粧品の動物実験を禁止している45か国に、EUの全加盟国が含まれます。同団体によると、EUでは化粧品の動物実験と、動物実験をした化粧品の販売の両方が禁止されています。

Q. 日本では、化粧品の動物実験は禁止されていますか?

A. いいえ、日本の法律には、化粧品の動物実験を禁止する規定は見当たりません。動物愛護法第41条は、研究などで動物を使う場合全般に、代わりの方法や使う数の削減、苦痛の少ない方法への配慮を求める条文です。動物保護団体Humane World for Animalsの集計で、化粧品の動物実験を禁止している45か国にも、日本は入っていません。

まとめ

米ペンシルベニア州のビーグル法案(SB 381)は、安楽死を必要としない研究を終えた犬猫に、安楽死の前に30日以上の譲渡の機会を設けるよう施設に求める法案で、2026年10月20日に議会を通過しました。一方、日本の動物愛護法と環境省の基準には、実験を終えた動物を家庭に譲渡する決まりはありません。

動物愛護法の全体と飼い主の義務は、動物愛護法とは|罰則と飼い主の義務をわかりやすく解説で確認できます。

この先の注目点

  • 知事の署名:法案が知事に届いてから10日以内に、署名か差し戻しか(議会の休会で差し戻せない場合は休会後30日以内)
  • 施行日:成立から180日後
  • 最初の譲渡の事例:州内の大学や研究施設が、譲渡プログラムや譲渡団体との協定を公表するか
  • 日本の動き:環境省の実験動物の基準や動物愛護法の見直しの議論で、実験を終えた動物の扱いが取り上げられるか

続報について

ペトログ編集部は、知事の署名や施行日など、この法案に動きがあったら、この記事に追記します。

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