ペットショップの犬猫に無資格で注射した疑いで幹部ら逮捕——店の健康管理は、だれがどんなルールで行うのか
2026年10月14日、大阪府警は、獣医師の資格がない店員が販売用の犬や猫に薬を注射したとして、ペットショップ運営会社の幹部4人を獣医師法違反の疑いで逮捕しました。
ペットショップで売られている子犬や子猫の健康は、だれが、どんなルールで守っているのか。今回のニュースを見て、気になった方も多いのではないでしょうか。この記事では、事件の概要と、ペットショップの犬猫の健康管理を定めた法律のルールを解説します。すでにペットショップから迎えた方や、これから迎える方が確かめられることも、分かりやすくまとめました。
ポイントは2つです。1つは、病気やけがをした犬や猫の診察や治療(診療)を仕事として行えるのは、獣医師だけだということ。もう1つは、ペットショップが犬や猫を売る前に、お客さんに説明しなければならないことが、法律で決まっていることです。
執筆:ペトログ編集部
この記事でわかること
- 大阪府警が2026年10月14日に逮捕した、ペットショップでの無資格注射の疑いをめぐる事件の概要と今の段階
- 獣医師でない店員が販売用の犬や猫に注射したことが、なぜ法律違反の疑いになるのか(獣医師法・医薬品医療機器法)
- ペットショップの犬猫の健康管理を決めている動物愛護法のルール(表で整理)
- 迎える前・迎えたあとに確かめられること
大阪府警が10月14日、ペットショップ運営会社の幹部4人と獣医師2人を逮捕
大阪府警は2026年10月14日、ペットショップを運営する会社(本社・堺市)の代表取締役ら幹部4人を、獣医師法違反の疑いで逮捕しました。2025年1月から2026年1月にかけて、大阪府内の4店舗で、獣医師の資格がない店員が販売用の犬と猫計9匹に薬を注射した疑いが持たれています。
注射されたのは、犬や猫のウイルス感染症の治療に使われる動物用の注射薬です。劇薬に指定された、獣医師の指示が必要な医薬品と報じられています。
注射を受けた9匹は、もともと体調を崩していた犬や猫です。うち7匹がその後死にましたが、その体調不良が死因となった可能性もあるため、注射との因果関係は分かっていないとされます。
出典:共同通信(東京新聞掲載、2026年10月14日)/時事通信(2026年10月14日)/朝日新聞(2026年10月14日)/毎日新聞(2026年10月14日)/産経新聞(2026年10月14日)
同じ日、府警は獣医師2人を、医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕しました。薬を売るための許可(販売業の許可)を受けていないのに、2026年2月、注射された薬とは別の医薬品77点をこの会社に販売した疑いです。
事件は、2026年1月に店の関係者が警察に相談したことで分かりました。府警は捜索で投薬マニュアルを押収しており、経費を抑えるために、複数の店舗で組織的に注射が繰り返されていた可能性があるとみて調べています。府警は、6人が容疑を認めているかどうかを明らかにしていません。
出典:朝日新聞(2026年10月14日)/時事通信(2026年10月14日)/読売新聞(2026年10月14日)/産経新聞(2026年10月14日)/日本経済新聞(2026年10月14日)/読売テレビ(2026年10月15日)/ABCテレビ(2026年10月15日)
注:いずれも捜査の段階で、有罪が確定したわけではありません。会社名・店舗名・個人名は記載していません。
店での無資格注射はなぜ問題か|犬や猫の診療を仕事にできるのは獣医師だけ
店で売られている犬や猫であっても、病気の治療は獣医師の仕事です。獣医師法第17条は、獣医師でなければ、犬や猫などの飼育動物の診療を業務としてはならないと定めています。
違反すると、2年以下の拘禁刑(懲役と禁錮をまとめた刑)か100万円以下の罰金、またはその両方が科されます(第27条)。今回の4人は、獣医師法違反(診療業務の制限)の疑いで逮捕されたと報じられています。診療業務の制限を定めているのが、この第17条です。
薬を売る側にも決まりがあります。医薬品医療機器法(正式名:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第24条第1項は、薬局か医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として医薬品を販売してはならないと定めています。例外として許可がいらないのは、薬の製造販売業者や製造業者が、薬局やほかの業者に売る場合だけです。獣医師を例外とする定めはありません。
動物用の医薬品にも、この法律が適用されます(第83条)。農林水産省は、動物用医薬品は都道府県の許可を受けた販売店から買うか、獣医師から処方を受けることで手に入れられると説明しています。また、取り扱いに獣医師の専門的な知識が必要な「要指示医薬品」には、獣医師からの処方や指示書が必要です。なお、劇薬とは、作用が強いものとして国が指定した医薬品のことです(第44条第2項)。
出典:農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課「動物用医薬品とは」(令和3年12月、PDF)
| 条文 | 定めていること |
|---|---|
| 獣医師法第17条 | 獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない |
| 獣医師法第27条 | 第17条に違反して獣医師でなくて飼育動物の診療を業務とした者は、2年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(第1号) |
| 医薬品医療機器法第24条第1項 | 薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。)してはならない(ただし書は省略) |
| 医薬品医療機器法第84条 | 第24条第1項に違反したときは、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(第9号) |
注:条文は2026年10月15日にe-Gov法令検索で確認した現行の条文によります(獣医師法は令和8年4月1日施行、医薬品医療機器法は令和8年5月21日施行の版)。罰則の条文は、該当する号の部分を要約しています。
ペットショップの犬猫の健康管理は、だれがどんなルールで行うのか
ペットショップは、動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)でいう「第一種動物取扱業者」(動物を売ったり預かったりするなど、動物を扱う仕事をする事業者)です。動物を売る事業者は、都道府県知事(政令指定都市では市長)の登録を受けなければなりません(第10条第1項)。犬や猫を売る店は、そのなかの「犬猫等販売業者」にあたり、犬猫等販売業者だけの決まりもあります。
健康管理のもとになるのは、国(環境省)が省令で定めた基準です(第21条)。基準では、日常的な健康管理に加えて、病気やけがのときは速やかに必要な処置を行い、必要に応じて獣医師による診療を受けさせることが決められています。この基準が具体的に定められた経緯は、動物愛護法とは|罰則と飼い主の義務をわかりやすく解説の「2019年の動物愛護法改正で何が変わったか」で紹介しています。
犬猫等販売業者には、さらに2つの決まりがあります。1つは、獣医師などとしっかり連携することです(第22条の3。条文では「獣医師等との適切な連携の確保」)。もう1つは、登録のときに出す「犬猫等健康安全計画」に従って業務を行うことです(第10条第3項・第22条の2)。犬猫等健康安全計画とは、販売する幼い犬猫の健康と安全を守るための体制などをまとめた計画です。
つまり、日々の健康管理はペットショップが行い、病気やけがのときは必要に応じて獣医師の診療を受けさせる決まりです。診療そのものを獣医師以外が業務として行うことは、獣医師法で禁じられています。基準を守らない店には、都道府県知事などが改善するよう求め(勧告)、従わなければ命令を出せます(第23条)。
| ルール | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 診療は獣医師だけ | 獣医師でなければ、犬や猫などの飼育動物の診療を業務として行えない | 獣医師法第17条 |
| 医薬品の販売は許可を受けた者だけ | 薬局か販売業の許可がなければ、業として医薬品を販売できない。動物用医薬品にも適用 | 医薬品医療機器法第24条第1項・第83条 |
| 日常の健康管理 | 病気やけがの予防、寄生虫の予防や駆除など、日常的な健康管理を行う | 動物愛護法第21条、基準省令第2条第4号ロ |
| 病気・けがのとき | 速やかに必要な処置を行い、必要に応じて獣医師による診療を受けさせる | 基準省令第2条第4号ヘ |
| 獣医師との連携 | 犬猫等販売業者は、獣医師等との適切な連携の確保を図る | 動物愛護法第22条の3 |
| 販売前の説明 | その子の今の状態を直接見せ、対面で、書面などを使って病歴・ワクチンの接種状況など18項目を説明する | 動物愛護法第21条の4、施行規則第8条の2 |
| 治療・ワクチンの証明書 | 店で治療やワクチン接種をした動物は、契約時に獣医師が発行した証明書を渡す | 基準省令第2条第4号チ |
注:2026年10月15日にe-Gov法令検索で確認した現行の条文(動物愛護法は令和8年6月5日施行、同法施行規則は令和7年9月1日施行、基準省令は令和5年3月24日施行の版)を、ペトログ編集部が要約したものです。「基準省令」は「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」の略です。
ペットショップで迎える前・迎えたあとに確かめられること
店の奥で行われる健康管理を、お客さんが外から確かめることはできません。それでも、法律で決まった説明と書類は、迎える前に受け取れます。
動物愛護法第21条の4により、犬や猫を売る店は、販売の前に、その子の今の状態を直接見せたうえで、対面で、書面などを使って説明しなければなりません。説明する項目は施行規則で18項目決まっていて、健康と、その子の生まれに関わるのは次の項目です。
- その子の病歴、ワクチンの接種状況など(施行規則第8条の2第2項第16号)
- 人と動物の共通感染症など、その動物がかかるおそれの高い病気の種類と予防方法(同第7号)
- 親やきょうだい(同腹子)の遺伝性疾患の発生状況(同第17号)
- 生年月日と、繁殖を行った者の氏名または名称、登録番号など(同第12号・第14号)
さらに、店で治療やワクチン接種を受けた子については、契約のときに、獣医師が発行した証明書を受け取れます(基準省令第2条第4号チ)。仕入先から受け取った証明書があれば、それも一緒に渡すことになっています。
すでにペットショップから迎えた方は、契約のときに受け取った説明の書面や証明書を見返してみてください。その子の病歴やワクチンの接種状況を、かかりつけの動物病院に伝えるときにも使えます。
迎える前に確かめたいこと
- 説明の書面に、その子の病歴とワクチンの接種状況が書かれているか
- 店で治療やワクチン接種をした子なら、獣医師が発行した証明書があるか
- 店内に、登録番号や動物取扱責任者の氏名などを書いた表示(標識)が掲げられているか(動物愛護法第18条・施行規則第7条)
販売前の説明が守られていないときは、都道府県知事などが店に改善を求める(勧告する)ことができます(第23条第2項)。説明を受けられない、書面をもらえないなど気になることがあれば、まず標識で登録番号を確かめてください。そのうえで、店を登録した都道府県や政令指定都市の動物愛護の担当(保健所・動物愛護センターなど)に問い合わせましょう。
ペトログ編集部の視点
今回問われているのは、動物愛護法ではなく、獣医師法と医薬品医療機器法の違反の疑いです。ただ、店の犬猫の健康管理という点では、動物愛護法の基準や、獣医師との連携の決まりとも重なるテーマです。
法律で決まった販売前の説明と、獣医師が発行した証明書が、飼い主さんが自分で確かめられる大切な手がかりになると編集部は考えます。起訴・不起訴など捜査の続報があれば追記します。
まとめ
この記事の要点
- 大阪府警は2026年10月14日、獣医師の資格がない店員が販売用の犬猫9匹に薬を注射したとして、ペットショップ運営会社の幹部4人を獣医師法違反の疑いで逮捕した。医薬品を無許可で販売したとして、獣医師2人も医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕。いずれも捜査の段階
- 犬や猫の診療を仕事として行えるのは獣医師だけ(獣医師法第17条)。医薬品を仕事として販売できるのは、薬局か販売業の許可を受けた者だけ(医薬品医療機器法第24条第1項)
- ペットショップは日常の健康管理を行い、病気やけがのときは必要に応じて獣医師の診療を受けさせる。販売前には病歴やワクチンの接種状況などを対面で説明し、店で治療やワクチン接種をした子には獣医師の証明書を渡す決まり
動物愛護法の仕組みを確かめる
ペットショップなどの事業者が守る基準のほか、飼い主の責務(第7条)と罰則(第44条)、2019年の改正で変わった点を、解説記事にまとめています。
動物愛護法とは|罰則と飼い主の義務をわかりやすく解説 動物愛護法(正式名称:動物の愛護及び管理に関する法律)は、動物の虐待や遺棄を禁じ、飼い主の責任を定めた法律です。この記事では、飼い主に求められることと罰則を、条文に沿ってわか...
出典
- 共同通信「販売犬猫に無資格注射か ペット店経営男ら4人逮捕、大阪」(東京新聞掲載、2026年10月14日)(2026-10-15確認)
- 時事通信「販売ペットに無資格注射か チワワなど7匹死ぬ、4人逮捕―大阪府警」(2026年10月14日)(2026-10-15確認)
- 朝日新聞「ペットチェーン店で劇薬を無資格注射の疑い 薬売った?獣医師も逮捕」(2026年10月14日)(2026-10-15確認)
- 毎日新聞「無免許従業員が犬に注射か ペット会社代表ら逮捕 死んだ動物も」(2026年10月14日)(2026-10-15確認)
- 日本経済新聞「ペット用の薬を不正販売し無資格投与か ショップ代表や獣医師ら逮捕」(2026年10月14日、会員限定記事。無料で読める冒頭部分で確認)(2026-10-16確認)
- 読売新聞オンライン「無資格で犬と猫に抗ウイルス剤を注射したなどの容疑、ペットショップ運営の社長ら6人逮捕」(2026年10月14日)(2026-10-16確認)
- 産経新聞「ペットショップで無資格で犬猫9匹に注射、容疑で全国展開の運営会社の代表らを逮捕」(2026年10月14日)(2026-10-16確認)
- 読売テレビ「ペットショップで犬や猫に劇薬を投与していた事件 獣医師の男がショップに医薬品を販売した疑い 経費節減が目的か」(日テレNEWS掲載、2026年10月15日)(2026-10-16確認)
- ABCテレビ「無資格で犬や猫に薬剤投与させた疑い ペットショップ運営チェーンの社長ら6人逮捕」(2026年10月15日)(2026-10-16確認)
- e-Gov法令検索「獣医師法」(昭和24年法律第186号)第17条・第27条(2026-10-15確認。令和8年4月1日施行の現行条文)
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号)第24条・第44条・第83条・第84条(2026-10-15確認。令和8年5月21日施行の現行条文)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号)第10条・第18条・第21条・第21条の4・第22条の2・第22条の3・第23条(2026-10-15確認。令和8年6月5日施行の現行条文)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」(平成18年環境省令第1号)第7条・第8条の2(2026-10-15確認。令和7年9月1日施行の現行条文)
- e-Gov法令検索「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」(令和3年環境省令第7号)第2条第4号(2026-10-15確認。令和5年3月24日施行の現行条文)
- 農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課「動物用医薬品とは」(令和3年12月、PDF)(2026-10-15確認)
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