犬の狂犬病ワクチンと登録|費用・時期と、2027年3月からの変更
犬を飼ったら、市区町村への登録(一生に1回)、毎年1回の狂犬病ワクチン(法律では「予防注射」)、鑑札と注射済票を犬に着けておくことの3つが、法律で決められた飼い主の基本の義務です。注射の時期の決まりは、2027年3月2日から変わります。
子犬を迎える準備をしている方、迎えたばかりの方、注射のお知らせを見て「本当に毎年いるの?」「いくら?」と思った方に向けて、条文と厚生労働省・自治体の資料をもとに、登録と注射の期限、費用、2027年3月からの変更を説明します。
登録や毎年の注射をしないと、20万円以下の罰金の対象になります(第27条)。海外には3年ごとでよい地域もありますが、日本で飼う犬は、日本の法律どおり毎年1回です。
執筆:ペトログ編集部
この記事でわかること
- 犬を飼ったらやること(法律で決まっている3つ)
- 登録の期限と、引っ越し・譲り受けたときの届出
- マイクロチップを入れた犬の登録(特例制度)
- 狂犬病ワクチンを受ける時期と、2027年3月からの変更
- 費用(江東区・横浜市・大阪市・松山市の額)
- 副作用が心配なとき、高齢や持病のある犬のとき
- 日本に狂犬病がないのに、毎年受ける理由
- 海外の犬の狂犬病ワクチン事情
目次
- 犬を飼ったらやること|法律で決まっている3つ(登録・毎年の注射・札)
- 犬の登録|迎えて30日以内、一生に1回
- マイクロチップを入れた犬は、登録しなくていい?|特例に参加している市区町村だけ
- 狂犬病ワクチンはいつ受ける?|2027年3月1日までは4〜6月、3月2日からは時期の決まりなし
- 犬の狂犬病ワクチンの費用・値段|4つの市区の額
- 集合注射と動物病院、どっちで受ける?
- 狂犬病ワクチンの副作用が心配なとき|高齢・持病のある犬は事前に獣医師へ
- 日本に狂犬病はないのに、なぜ毎年受けるのか
- 受けさせないとどうなる?|20万円以下の罰金と抑留
- 海外の犬の狂犬病ワクチン事情|毎年・3年ごと・義務なし、国によって違う
- よくある質問
- まとめ
- お住まいの市区町村の狂犬病予防注射のページで、時期・場所・料金を確かめる
犬を飼ったらやること|法律で決まっている3つ(登録・毎年の注射・札)
厚生労働省も、この3つを犬の飼い主の義務として挙げています。表には、引っ越したときなどの届出(これも罰金のある義務です)もあわせて載せました。期限と届け先は、次の表のとおりです。
出典:厚生労働省「狂犬病」
| やること | いつまでに | どこで・何をもらう | 条文 |
|---|---|---|---|
| 登録 | 迎えた日から30日以内(生後90日以内の子犬は、生後90日を過ぎた日から30日以内)。一生に1回 | 犬がいる市区町村に申請し、鑑札をもらう | 第4条第1項・第2項 |
| 予防注射(狂犬病ワクチン) | 毎年1回。2027年3月1日までは4月1日〜6月30日の間(2026年の期間は終了)、2027年3月2日からは時期の決まりなし | 動物病院か集合注射で受け、市区町村から注射済票をもらう | 第5条第1項・第2項、施行規則第11条 |
| 鑑札と注射済票を着ける | いつも | 犬に着けておく | 第4条第3項、第5条第3項 |
| 届出 | 犬が亡くなった、引っ越した、飼い主の氏名・住所が変わった、飼い主が変わったときから30日以内 | 犬がいる市区町村(引っ越したときは新しい市区町村) | 第4条第4項・第5項 |
注:条文は狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)と狂犬病予防法施行規則です。時期は2026年10月時点の決まりで、2027年3月2日の改正は「狂犬病ワクチンはいつ受ける?」の節で説明しています。義務に違反すると、20万円以下の罰金の対象になります(第27条)。
出典:e-Gov法令検索「狂犬病予防法」(第2条・第4条・第5条・第27条)、e-Gov法令検索「狂犬病予防法施行規則」(第11条)
なお、狂犬病予防法の登録と予防注射の決まりは犬だけのもので、猫には登録や予防注射の義務はありません(第2条第1項ただし書)。猫も輸出入の検疫などの一部の決まりの対象ですが、登録と予防注射は対象外です。
犬の登録|迎えて30日以内、一生に1回
犬を迎えると、毎日のお世話に追われて、手続きは後回しになりがちです。けれども登録には期限があり、犬を迎えた日から30日以内に、犬がいる市区町村に申請します。生後90日以内の子犬なら、生後90日を過ぎた日から30日以内が期限です。
登録は1頭につき基本的に一生に1回で、申請すると鑑札(登録したことを示す札)が交付されます。鑑札は犬の生涯有効なので、なくさないようにしましょう。
出典:e-Gov法令検索「狂犬病予防法」(第4条第1項〜第3項)、厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」
引っ越したとき・譲り受けたときも30日以内に届け出る
犬が亡くなったとき、引っ越したとき、飼い主の氏名や住所が変わったときは、30日以内に届け出てください(第4条第4項、施行規則第7条)。引っ越したときの届け先は、引っ越し先の市区町村です(第4条第4項)。
すでに登録されている犬を、ペットショップやブリーダー、保護団体、家族や知人から迎えたときは、新しい飼い主が30日以内に届け出ます(第4条第5項)。まだ登録されていない犬なら、迎えた日から30日以内に新しく登録が必要です。
出典:e-Gov法令検索「狂犬病予防法」(第4条第4項・第5項)、e-Gov法令検索「狂犬病予防法施行規則」(第7条)
迎えた日から30日。最初の手続きは、思っているより早くやってきます。
鑑札と注射済票は、首輪に付けておいてください
2つの札を犬に着けておくのは法律の義務で(第4条第3項・第5条第3項)、迷子になったときの手がかりにもなるものです。厚生労働省は「もしも飼い犬が迷子になっても、装着されている鑑札から確実に飼い主の元に戻すことができます。」と説明しています。
マイクロチップを入れた犬は、登録しなくていい?|特例に参加している市区町村だけ
迎えた犬にマイクロチップが入っていると、市区町村への登録もいらないのでは、と迷うところです。答えは、犬がいる市区町村が「狂犬病予防法の特例制度」に参加しているかどうかで変わります。
2022年6月1日に始まったこの制度では、犬がいる市区町村が参加していれば、環境省の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」への登録を狂犬病予防法の登録の申請とみなし、犬に入っているマイクロチップも鑑札とみなす決まりです(動物愛護法第39条の7第2項)。たとえば大阪市は「飼い犬にマイクロチップを装着し、令和4年11月1日以降に国に登録した場合は、本市への登録申請は不要です。」と案内しています。
一方、参加していない市区町村では、マイクロチップの登録とは別に、これまでどおり市区町村で狂犬病予防法の登録が必要です。参加しているかどうかはマイクロチップの登録を終えたときの画面に表示されるので、そこで確かめてください。
出典:厚生労働省「マイクロチップの装着等の義務化に係る狂犬病予防法の特例に関する対応について」(問2・問3)、e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(第39条の7)、大阪市「愛犬の登録と狂犬病予防注射」
特例に参加している市区町村でも、ここは変わりません
- 注射済票は別:マイクロチップが鑑札の代わりになっても、注射済票はこれまでどおり市区町村で交付を受け、犬に着けます。
- 装着しただけでは鑑札にならない:装着した日から30日以内に、環境大臣への登録(マイクロチップ情報登録)が必要です。
- 前にもらった鑑札は返す:マイクロチップが鑑札とみなされたら、それまでの鑑札は市区町村に速やかに提出します。
注射やお知らせのハガキのことは、マイクロチップ登録のコールセンターでは答えられないので、市区町村に聞いてください(環境省)。
マイクロチップの決まりは動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)にあり、法律の全体は動物愛護法とは|罰則と飼い主の義務をわかりやすく解説で説明しました。装着と変更登録の義務が誰にあるのかは、猫の記事ですが猫のマイクロチップ|義務なのは誰?登録・変更の手続きと費用にまとめています(犬も同じ登録サイトを使います)。
狂犬病ワクチンはいつ受ける?|2027年3月1日までは4〜6月、3月2日からは時期の決まりなし
いま、注射の時期の決まりが変わる途中です。2027年3月1日までの決まりでは、注射は毎年4月1日〜6月30日の間に1回です(2026年の期間は終わっています)。2027年3月2日からは「4月1日〜6月30日に」という期間の決まりがなくなり、毎年1回、都合のよい時期に受ければよくなります。決まっているのは「受けさせなければならない期間」なので、今の決まりでも、動物病院では1年を通して注射を受けられます(大阪市の案内)。
根拠は、2026年4月1日に公布された厚生労働省令第73号です。改正後の施行規則第11条第1項は「生後九十一日以上の犬の所有者は、…狂犬病の予防注射を受けさせなければならない。」で、「四月一日から六月三十日までの間に一回」という言葉がなくなりました。法律(第5条第1項)の「毎年一回」は残るので、横浜市も「なお、毎年1回の接種義務に変更はありません。」と案内しています。
出典:厚生労働省「狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令」(令和8年厚生労働省令第73号)、横浜市「狂犬病予防法施行規則が改正されました(令和9年3月2日施行予定)」、大阪市「愛犬の登録と狂犬病予防注射」
ただし国は、時期の決まりがなくなることで注射の間隔が空きすぎないよう、「少なくとも毎年同時期に1回の予防注射を実施すること」の徹底を自治体に求めています。あわせて、これまでどおり4月1日〜6月30日を目安に、3か月程度の「予防注射強化期間」を設けることもすすめています(自治体の事情で時期は変えられます)。毎年だいたい同じ時期に受けると決めておくと、受け忘れを防げます。
出典:厚生労働省 感染症対策部長通知「狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(令和8年4月1日 感発0401第1号、鳥取県のサイトに掲載)(3(1)・3(2))
| 時期 | 決まり |
|---|---|
| 2026年4月1日 | 改正省令(厚生労働省令第73号)が公布 |
| 2027年3月1日まで | 注射は毎年4月1日〜6月30日の間に1回(2026年の期間は終了) |
| 2027年3月2日 | 改正省令が施行。期間の決まりがなくなる。毎年1回の義務は変わらない。国は自治体に「毎年同時期に1回」の徹底を求め、4〜6月を目安にした強化期間をすすめている |
注:2026年10月時点の内容です。
新しく迎えた犬は、迎えて30日以内に
犬を迎えたのが4〜6月でなくても、注射には期限があるので注意してください。生後91日以上で、まだ注射を受けていない(受けたか分からない)犬を迎えたら、迎えた日から30日以内に注射を受けさせる決まりです(2026年10月時点の施行規則第11条第2項)。子犬に注射の義務がかかるのは生後91日以上からなので、いつ受けるかは動物病院で相談しましょう。
注:2026年10月時点の条文(施行規則第11条第2項)で「注射を受けていない」とされるのは、3月2日以降(1月1日〜5月31日に迎えたときは、前の年の3月2日以降)に注射を受けていない犬です。2027年3月2日からは、迎えた日からさかのぼって1年以内に注射を受けていない犬に変わります(厚生労働省令第73号)。
出典:e-Gov法令検索「狂犬病予防法施行規則」(第11条)
2027年3月に受けると、令和8年度の注射済票になる
これまで、3月2日〜31日に受けた注射は、翌年度の注射済票になっていました。改正後は、注射を受けた年度の注射済票です。東京都は「令和9年3月2日から同月31日までの間に予防注射を実施した場合、令和8年度の注射済票が交付されますので、ご注意ください。」と呼びかけています。
2027年3月に受けるつもりなら、どの年度の注射になるかを、市区町村に確かめてから予約してください。注射済票は年度ごとに色が変わり、令和8年度は赤です(横浜市)。厚生労働省が示す色の順番に当てはめると、令和9年度は青になります(編集部の計算)。
出典:東京都保健医療局「毎年4月から6月までは狂犬病予防注射月間です!」、横浜市「狂犬病予防法施行規則が改正されました(令和9年3月2日施行予定)」、厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」
この記事の更新について
ペトログ編集部は、2027年3月2日の施行の前に、この節と表の時期の説明、費用の表、よくある質問、まとめを見直します。
犬の狂犬病ワクチンの費用・値段|4つの市区の額
ここでは犬の狂犬病予防注射の費用を、市区町村の公式ページの額で並べました。
| 市区 | 集合注射の料金 | 内訳 | 登録の手数料(初めてのときだけ) |
|---|---|---|---|
| 東京都江東区 | 3,750円 | 注射3,200円+注射済票550円 | 区報に記載なし |
| 横浜市 | 3,650円 | 注射3,100円+注射済票550円 | 3,000円 |
| 大阪市 | 3,300円(別々に支払う) | 注射2,750円+注射済票550円 | 3,000円 |
| 愛媛県松山市 | 3,100円 | 注射済票の交付手数料を含む | 3,000円(まだ登録しておらず、マイクロチップを装着していない犬) |
注:集合注射の料金は2026年度(令和8年度)の額、登録の手数料は各市の公式ページに載っている額です。江東区は「こうとう区報」令和8年3月21日号、ほかは各市の公式ページで、2026年10月21日に確認しました。大阪市の合計は、注射料金と注射済票の手数料を足した編集部の計算です。大阪市が設置する集合注射会場は、令和8年度で終わります。動物病院で受けるときの注射料金は病院ごとに違い、江東区は「料金は動物病院によって異なる場合があります」、大阪市は「各動物病院へお問い合わせください。」と案内しています。
出典:江東区「こうとう区報」令和8年3月21日号、横浜市「令和8年度 狂犬病予防注射集合注射会場について」、横浜市「犬の飼い主さんへ」、横浜市青葉区「犬の飼い主さんへ」、大阪市「愛犬の登録と狂犬病予防注射」、松山市「令和8年度(2026年度)狂犬病予防集合注射」
表の4つの市区を比べると、注射済票の手数料は550円(松山市は注射料金に含む)、登録の手数料は3,000円(江東区は区報に記載なし)で同じです。犬を迎えた最初の年は、登録と注射の両方の費用がかかります。横浜市で集合注射を受けるなら、登録3,000円と注射3,650円で、合わせて6,650円です(編集部の計算)。
登録は一生に1回なので、2年目からは毎年の注射の費用が中心になります。鑑札をなくしたときも、再交付の手数料(横浜市では1,600円)がかかるので気をつけましょう。
集合注射と動物病院、どっちで受ける?
狂犬病ワクチンを受ける場所は、市区町村が会場を設けて行う集合注射か、動物病院のどちらかです。どちらで受けるかは飼い主が選べる、と厚生労働省は説明しています。ただし、集合注射を行うかどうかは自治体の判断なので、行っていない自治体もあります。
大阪市のように、市が設置する集合注射会場を令和8年度で終える自治体もあり、同市は「犬の狂犬病予防注射はすべての「動物病院」で一年を通して受けることができます。」と案内しています。
どちらで受けるか迷ったら、犬の体調で決めてください。松山市の案内では、集合注射は「飼い主がコントロールできる健康な犬に限り注射を行います」とされ、病気の犬や老犬など注射に不安があるときは動物病院に相談するように、とのことです。持病のある犬や高齢の犬、注射のときに強く興奮してしまう犬は、動物病院で受けることをおすすめします。
出典:厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」(Q30)、大阪市「愛犬の登録と狂犬病予防注射」、松山市「令和8年度(2026年度)狂犬病予防集合注射」
狂犬病ワクチンの副作用が心配なとき|高齢・持病のある犬は事前に獣医師へ
注射のあとに愛犬がぐったりしないか、心配になるのは自然なことです。厚生労働省のQ&Aは、「狂犬病の予防注射を含む全ての予防注射は、副反応が発生する可能性があります。犬に対する狂犬病の予防注射においては、一過性の副反応(疼痛、元気・食欲の不振、下痢又は嘔吐等)が認められることがあります。」と説明しています。
過敏体質の犬では、まれにアレルギー反応(顔のはれ、かゆみ、じんましんなど)や、アナフィラキシー反応(急で重いアレルギー反応)も報告されているとのことです。獣医師には、重大な副作用などを知ったときに農林水産省へ報告する義務があり、報告された狂犬病予防注射の副作用は平成27年度(2015年度)で18件でした。同じ年度に注射を受けた犬は約469万頭です。
注:件数と頭数は、厚生労働省のQ&Aに載っている平成27年度の数字で、Q&Aにはこれより新しい年度の件数は載っていません(注射頭数は4,688,240頭)。報告の義務があるのは、重大な副作用などです。
出典:厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」(Q28)
事前に獣医師に相談したい犬
横浜市は集合注射の案内で、次のどれかに当てはまる犬について「事前にかかりつけの獣医師とよく相談してください。」と求めています。
- 予防接種のあと2日以内に、アレルギーを疑う症状が出たことがある
- 薬で皮膚に発疹が出るなど、アレルギーを疑う症状が出たことがある
- 食欲や元気がないなど、健康状態に不安がある(特に高齢犬)
- 注射のときに、過剰に興奮してしまう(特に高齢犬)
- 心臓病・腎臓病・肝臓病・血液の病気などの基礎疾患や、治療を続けている病気がある
- 1年以内に、けいれん発作を起こしたことがある
出典:横浜市「令和8年度 狂犬病予防注射集合注射会場について」
どれかに当てはまるなら、注射の日を決める前に、かかりつけの獣医師に相談してください。体調が悪い犬やアレルギーがある犬は注射を受けられないことがある、と大阪市も案内しています。注射のあとの過ごし方も、注射をした獣医師に聞いておくと安心です。
病気で注射が難しいとき
狂犬病予防法と施行規則には、病気の犬の注射を見送ってよいという決まりはありません。ただ、獣医師が書いた書類で報告するよう求めている自治体はあります。
東京都大田区の案内では、病気やアレルギーなどで注射が難しいときは、獣医師が発行した「健康診断書」等で保健所に報告する形です。「接種しない場合でも年1回の届出が必要です」とも書かれているので、住んでいる市区町村での扱いを、毎年確かめてください。
出典:e-Gov法令検索「狂犬病予防法」(第5条)、e-Gov法令検索「狂犬病予防法施行規則」、大田区「犬の健康上の理由から狂犬病予防接種を受けられないとき」
日本に狂犬病はないのに、なぜ毎年受けるのか
日本国内では、人は1956年、動物は1957年の猫を最後に、狂犬病は発生していません。厚生労働省によると、狂犬病予防法が施行されて犬の登録、予防注射、野犬などの抑留が徹底されたことで、わずか7年で撲滅に至りました。
一方、世界では、WHOの2017年の推計で年間5万9,000人が狂犬病で亡くなっていて、その大半はアジアとアフリカです。日本でも、海外で犬に咬まれ、帰国・入国してから発症して亡くなった人が、1970年に1人、2006年に2人、2020年に1人いました。狂犬病は一度発症すると効果的な治療法がなく、人はほぼ100%が亡くなります。犬も、発症したら治療はしません。
注:年間の死亡者数は、WHOの2017年の推計(うちアジア3万5,000人、アフリカ2万1,000人)です。
出典:厚生労働省「狂犬病」、厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」(Q8・Q10)
予防注射は、感染は防げなくても、発症を防げるものです。国内で発生すれば、その地域の犬にはつないで飼うよう命令が出されます。
ところが、令和6年度に予防注射を受けた犬は、登録されている犬の約7割でした。登録されていた犬が604万8,725頭、予防注射を受けたのが428万1,702頭です。
注:約7割(70.8%)は、厚生労働省の頭数から編集部が計算しました。登録されていない犬は、この頭数に入っていません。
出典:厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」、厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」(Q27)、厚生労働省「犬の登録頭数と予防注射頭数等の年次別推移」
国内で狂犬病が出ていない今も、法律上は毎年1回の注射が必要です。
受けさせないとどうなる?|20万円以下の罰金と抑留
登録の申請や届出をしない、鑑札や注射済票を着けない、予防注射を受けさせない飼い主は、20万円以下の罰金の対象です(第27条第1号・第2号)。また、登録や注射をしていない犬、札を着けていない犬は、捕獲・抑留の対象になります。
抑留とは、保健所でつないでおき、飼い主のいる犬かどうかを確かめることです。
出典:e-Gov法令検索「狂犬病予防法」(第27条)、厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」(Q24)、厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」
海外の犬の狂犬病ワクチン事情|毎年・3年ごと・義務なし、国によって違う
日本では毎年1回が当たり前ですが、海外の決まりは国によってさまざまです。
| 国・地域 | 犬の狂犬病ワクチンの決まり |
|---|---|
| 日本 | 法律で、毎年1回。全国どこでも同じ(狂犬病予防法第5条) |
| アメリカ | 州ごとに法律で決めている。ニューヨーク州は、初回を生後4か月までに、2回目を1年以内に受け、その後は使ったワクチンの承認条件どおり。カリフォルニア州は、初回の1年後に受け、その後は3年に1回以上 |
| ドイツ | 飼い主みんなに接種を義務づける決まりはなく、必要なときは当局が命じる。狂犬病の動物に触れたとき、接種していない犬は殺処分の対象になり、接種していた犬は対象外 |
| フランス | 危険犬種(第1・第2カテゴリー)の犬は、狂犬病のない地域に住んでいても接種が必要 |
| イギリス | 1922年から狂犬病がない。ペットと一緒に出入国するときは接種が必要 |
| オーストラリア | 狂犬病がない国。動物用の狂犬病ワクチンで正式に登録されたものはなく、海外へ連れて行く準備などのために許可を受けて使う |
| 台湾 | 法律にもとづき、毎年1回。受けさせないと3万〜15万台湾ドルの過料(屏東県の案内) |
| 韓国 | ソウル市が「毎年、定期的な接種が必要」と案内している |
注:2026年10月21日時点の内容です。イギリスとオーストラリアには、国内の犬に接種を義務づける決まりはありません。
国際獣疫事務局(WOAH)は、狂犬病のリスクがある地域で犬の少なくとも70%に接種すれば、人の患者をゼロにできるとしています。
アメリカの一部の州のように3年ごとでよい地域もありますが、日本で飼う犬は、日本の法律どおり毎年1回受けさせてください。
出典:ニューヨーク州「公衆衛生法 第2141条」(英語)、カリフォルニア州公衆衛生局「狂犬病の法令集」(英語)、ドイツ連邦法務省「狂犬病令」(ドイツ語)、フランス行政サービス公式サイト「危険な犬」(フランス語)、ウェールズ政府「狂犬病の手引き」(英語)、クイーンズランド州政府「狂犬病ワクチン」(英語)、屏東県政府の発表(中央通信社 2024年1月8日、中国語)、ソウル市の発表(2024年10月16日、韓国語)、国際獣疫事務局(WOAH)「Rabies」(英語)
よくある質問
Q. 犬の狂犬病ワクチンは毎年必要ですか?3年に1回ではだめですか?
A. はい、毎年1回必要です。3年に1回でよいという決まりは、日本の法律にはありません。狂犬病予防法第5条第1項が、犬の飼い主に「狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならない」と定めているためです。2027年3月2日からは4〜6月という時期の決まりがなくなりますが、毎年1回の義務は変わりません。アメリカのカリフォルニア州のように、初回の1年後からは3年に1回以上でよいとする地域もあります。ただ日本では法律で毎年1回と決まっているので、日本で飼う犬は毎年受けさせてください。
Q. 鑑札と注射済票は、どちらか1つを付けておけばいいですか?
A. いいえ、両方を犬に着けておく必要があります。鑑札は登録したことを示す札で、犬の一生使えるものです。注射済票はその年度に予防注射を受けたことを示す札で、注射を受けるたびに交付されます。どちらも着けておく義務があり(第4条第3項・第5条第3項)、着けていないと20万円以下の罰金の対象です。マイクロチップが鑑札とみなされる市区町村でも、注射済票は別に着けてください。
Q. 犬の鑑札は一度もらえば一生使えますか?なくしたらどうしますか?
A. はい、鑑札は犬の生涯有効です。過去に交付された様式の鑑札も有効だと、厚生労働省は説明しています。なくしたときは、住んでいる市区町村で再交付を受けてください。横浜市の場合、再交付の手数料は1,600円です。
Q. 去年、狂犬病ワクチンを受けさせ忘れました。どうすればいいですか?
A. 気づいたときに、できるだけ早く受けさせてください。予防注射は、法律で毎年1回受けさせると決まっています(第5条第1項)。大阪市の案内のとおり、動物病院では1年を通して受けられます。どの年度の注射済票が交付されるかと、その受け取り方は、住んでいる市区町村に確かめましょう。
まとめ
この記事の要点
- 犬の狂犬病ワクチンと登録は、飼い主の法律上の義務。市区町村への登録(一生に1回)、毎年1回の予防注射、鑑札と注射済票を着けておくことの3つで、違反は20万円以下の罰金の対象
- 登録は迎えた日から30日以内(子犬は生後90日を過ぎてから30日以内)。引っ越したとき・亡くなったとき・飼い主が変わったときの届出も30日以内
- マイクロチップが登録・鑑札の代わりになるのは、特例制度に参加している市区町村だけ。注射済票は別に交付を受けて着ける
- 時期は、2027年3月1日までは毎年4月1日〜6月30日(2026年は終了)。2027年3月2日からは時期の決まりがなくなるが、毎年1回の義務は変わらない。間隔が空きすぎないよう、毎年同じ時期に受けるのがおすすめ(2026年10月時点)
- 費用は、4つの市区の集合注射で3,100〜3,750円。登録の手数料は3つの市で3,000円。動物病院の注射料金は病院に確かめる
- 副作用が心配なときや、高齢・持病のある犬は、事前にかかりつけの獣医師に相談する(集合注射より動物病院がおすすめ)
お住まいの市区町村の狂犬病予防注射のページで、時期・場所・料金を確かめる
集合注射を行うかどうか、料金、注射済票の受け取り方は、市区町村ごとに違います。「お住まいの市区町村名 狂犬病予防注射」で検索して、公式ページを開いてみてください。確かめておきたいのは、次の5つです。
- 集合注射があるか。あれば日程と会場
- 注射の料金と、注射済票・登録の手数料
- 動物病院で受けたときの、注射済票の受け取り方
- マイクロチップの特例制度に参加しているか
- 2027年3月2日からの受け方
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出典
- e-Gov法令検索「狂犬病予防法」(昭和25年法律第247号)(2026-10-21確認。第2条、第4条、第5条、第27条)
- e-Gov法令検索「狂犬病予防法施行規則」(昭和25年厚生省令第52号)(2026-10-21確認。第7条、第11条)
- 厚生労働省「狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令」(令和8年厚生労働省令第73号、令和8年4月1日公布)(2026-10-21確認。附則:令和9年3月2日施行)
- 厚生労働省 感染症対策部長通知「狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(令和8年4月1日 感発0401第1号、鳥取県のサイトに掲載)(2026-10-21確認。3(1)予防注射の適切な実施、3(2)予防注射強化期間)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号)(2026-10-21確認。第39条の7)
- 厚生労働省「狂犬病」(2026-10-21確認)
- 厚生労働省「狂犬病に関するQ&A」(2026-10-21確認。Q8、Q10、Q24、Q27、Q28、Q30)
- 厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」(2026-10-21確認)
- 厚生労働省「犬の登録頭数と予防注射頭数等の年次別推移(昭和35年~令和6年度)」(2026-10-21確認)
- 厚生労働省「マイクロチップの装着等の義務化に係る狂犬病予防法の特例に関する対応について」(2026-10-21確認。問2、問3)
- 環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」(2026-10-21確認)
- 横浜市「狂犬病予防法施行規則が改正されました(令和9年3月2日施行予定)」(2026年9月1日更新、2026-10-21確認)
- 東京都保健医療局「毎年4月から6月までは狂犬病予防注射月間です!」(2026-10-21確認)
- 江東区「こうとう区報」令和8年3月21日号(テキスト版)(2026-10-21確認)
- 横浜市「令和8年度 狂犬病予防注射集合注射会場について」(2026-10-21確認)
- 横浜市「犬の飼い主さんへ」(2026-10-21確認。登録手数料)
- 横浜市青葉区「犬の飼い主さんへ」(2025年12月25日更新、2026-10-21確認。鑑札の再交付手数料)
- 大阪市「愛犬の登録と狂犬病予防注射」(2026年2月18日更新、2026-10-21確認)
- 松山市「令和8年度(2026年度)狂犬病予防集合注射」(2026年9月14日更新、2026-10-21確認)
- 大田区「犬の健康上の理由から狂犬病予防接種を受けられないとき」(2025年4月2日更新、2026-10-21確認)
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