公取委がセレクトバランスの販売会社に立ち入り検査——疑いは値引きとポイント還元の制限(再販売価格の拘束)
2026年10月20日、公正取引委員会(公取委)が、ペットフード「セレクトバランス」の販売会社に立ち入り検査を行いました。報道によると、疑われているのは値引きやポイント還元の制限です。報道と会社の発表に、フードの品質や安全性についての指摘はありません。
毎日食べさせているフードの名前を「独禁法違反の疑い」という見出しで目にすると、このまま与えてよいのか心配になります。この記事では、何が疑われているのか、「再販売価格の拘束」とはどういうことか、飼い主の買い物とどう関わるのかを、会社の発表と公取委の資料をもとに整理しました。
先にお伝えすると、このニュースを理由に、今のフードを慌てて切り替える必要はありません。また、今は立ち入り検査が入った段階で、違反と決まったわけではない点にも注意が必要です。
執筆:ペトログ編集部
この記事でわかること
- 立ち入り検査で何が疑われているのか(会社の発表と報道)
- 「再販売価格の拘束」とは何か、ポイント還元の制限が問題になった前例
- セレクトバランスを食べている子の飼い主さんが、今できること
目次
公取委がセレクトバランスの販売会社に立ち入り検査(2026年10月20日)
東証プライム上場の株式会社あらたは2026年10月20日、連結子会社の株式会社ベッツ・チョイス・ジャパンが、独占禁止法違反(再販売価格の拘束)の疑いで公取委の立ち入り検査を受けたと発表しました。あらたは、検査に全面的に協力する方針を示しています。
NHKによると、公取委が立ち入り検査に入ったのは20日の午前で、相手は愛知県に本社を置くペットフードの販売会社です。また、毎日新聞は、公取委が独禁法違反の疑いでペットフード業界に立ち入り検査をしたのは初めてだと報じました。
出典:株式会社あらた「公正取引委員会による当社連結子会社への立入検査について」(2026年10月20日 適時開示、PDF)/NHK「ペットフード販売会社が価格拘束疑い 公取委が立ち入り検査」(2026年10月20日)/毎日新聞「ペットフードの値下げ禁止疑い 公取委、販売会社に立ち入り」(2026年10月21日)
報道によると、値引きとネット通販のポイント還元を制限した疑い
疑いの中身は、報道各社が関係者への取材をもとに伝えたものです。時事通信と朝日新聞によると、同社は数年前から、取引先の小売店にセレクトバランスを指定した価格で売るよう求め、値引き販売を制限していた疑いがあります。
時事通信は、取引先にはペット用品店やペットサロン、ホームセンターなどがあり、安売りをした店には出荷停止をほのめかした疑いもあると伝えました。ネット販売のポイント還元率を制限した疑いは、時事通信と朝日新聞の両方が報じています。朝日新聞によると、10%を超えるポイントを還元しないよう求めた疑いもあるということです。
出典:時事通信「公取委、ペットフード販売会社に立ち入り 取引先の小売価格制限か」(2026年10月20日)/朝日新聞「高級ペットフード値引きを制限か、公取委が調査 背景にブランド化?」(2026年10月20日)
今の時点で分かっていることと、まだ決まっていないことを、次の表に分けました。
| 項目 | 今の時点で分かっていること | 出どころ |
|---|---|---|
| 検査を受けた会社 | あらたの連結子会社、ベッツ・チョイス・ジャパン | あらたの発表 |
| 疑われている行為 | 再販売価格の拘束(独占禁止法違反の疑い) | あらたの発表 |
| 疑いの中身 | 数年前から、小売店にセレクトバランスを指定した価格で売らせ、値引きやネット販売のポイント還元率を制限した疑い | 報道(時事通信・朝日新聞など。関係者への取材) |
| 会社の対応 | 検査に全面的に協力 | あらたの発表 |
| フードの品質・安全性 | 報道・発表に、品質や安全性についての指摘はない | 報道・あらたの発表(記載なし) |
| 違反かどうか | 決まっていない(立ち入り検査の段階) | ― |
| 今後の措置・値段 | 決まっていない | ― |
注:2026年10月21日時点。あらたの適時開示(2026年10月20日)と、NHK・時事通信・朝日新聞・毎日新聞の報道による。
「再販売価格の拘束」とは——店が値段を自由に決められないようにすること
再販売価格の拘束とは、商品を卸す会社が、それを仕入れて売る店に対して販売価格を決め、守らせることです。独占禁止法は、正当な理由がないのに「相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること」を不公正な取引方法の一つに挙げ(第2条第9項第4号)、第19条で「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」と定めています。
メーカーなどが、商品を仕入れる店に販売価格を指示して守らせる行為は、競争の重要な手段である価格を縛るものなので独占禁止法上、原則として違法になる、というのが公取委の説明です。一方で、公取委の指針は、事業者が自分の販売価格を自主的に決めることについて、「これによって事業者間の競争と消費者の選択が確保される。」と書いています。
出典:e-Gov法令検索「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号)/公正取引委員会「『流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針』の改正について」(2026年7月8日)/公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」
飼い主の側から見ると、同じフードでも、店によって値段やポイントが違うのが本来の姿です。安く売る店、ポイントを多く付ける店があることで、買う人は店を選べるようになります。
ポイント還元の制限も問題になった前例——どちらも「違反の認定」ではない
ペットフード以外で、ポイントの付与の制限も再販売価格の拘束の疑いとして取り上げられたのが、次の2件です。
- ダンロップタイヤ(2025年8月6日に公取委が確約計画を認定):オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」について、小売店に希望小売価格で売るよう求め、ポイント付与や送料無料などの実質的な割引をしないこと、ECモールに出品しないことなどを求めていた疑い
- ルックスオティカジャパン(2026年8月6日に公取委が確約計画を認定):サングラス「Ray-Ban」「Oakley」について、推奨小売価格以上で売ること、オンライン販売でポイントやクーポンなどを付けないことなどを求めていた疑い
どちらも、会社が申請した改善の計画(確約計画)を公取委が認めた形で、公取委は違反を認定したものではないと明記しました。公取委の確約手続の方針では、確約計画が認定されると、疑われた行為について公取委の命令(排除措置命令・課徴金納付命令)は出されない仕組みです。
出典:公正取引委員会「株式会社ダンロップタイヤから申請があった確約計画の認定について」(2025年8月6日)/公正取引委員会「ルックスオティカジャパン株式会社から申請があった確約計画の認定について」(2026年8月6日)/公正取引委員会「確約手続に関する対応方針」
ただし、今は立ち入り検査が入ったばかりで、セレクトバランスの件が同じ流れになるとは限りません。
セレクトバランスを食べている子の飼い主さんが、今できること
今回、報道と会社の発表で問題とされているのは、価格の決め方です。フードの品質や安全性についての指摘はなく、このニュースを理由に慌ててフードを切り替える必要はありません。
別の理由で切り替えを考えているときも、いつもどおり愛犬・愛猫の様子を見ながら、時間をかけて少しずつ進めましょう。なお、この先の値段やポイントがどうなるかは、まだ分かっていません。
続報について
公取委の発表など続報を確認したら、この記事に追記します。
よくある質問
Q. 希望小売価格を示すだけでも、再販売価格の拘束にあたりますか?
A. いいえ、参考として示すだけなら、それ自体は問題になりません。公取委の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」は、メーカーなどが設定する希望小売価格について、「単なる参考として示されているものである限りは、それ自体は問題となるものではない。」と書いています。一方で、その価格を守らせるなど、店の販売価格を拘束する場合は原則として違法になる、というのが指針の考え方です。
Q. 公取委の立ち入り検査のあと、セレクトバランスの件はどうなりますか?
A. 違反かどうかも、どんな措置になるかも、2026年10月21日時点では決まっていません。公取委の確約手続の方針では、会社が申請した改善の計画(確約計画)が認定されると、排除措置命令や課徴金納付命令は出されない仕組みです。ポイントの制限が問題になったダンロップタイヤとルックスオティカジャパンの件は、確約計画の認定という形になりましたが、今回も同じになるとは限りません。
まとめ
- 公取委は2026年10月20日、セレクトバランスの販売会社に、再販売価格の拘束の疑いで立ち入り検査を行いました。報道によると、値引きやネット販売のポイント還元率を制限した疑いがもたれています。
- 今は立ち入り検査の段階で、違反と決まったわけではない点に注意が必要です。
- 問題とされているのは価格の決め方で、フードの品質や安全性についての指摘はないため、慌てて切り替える必要はありません。
出典
- 株式会社あらた「公正取引委員会による当社連結子会社への立入検査について」(2026年10月20日 適時開示、PDF)(2026-10-21確認)
- NHK「ペットフード販売会社が価格拘束疑い 公取委が立ち入り検査」(2026年10月20日)(2026-10-21確認)
- 時事通信「公取委、ペットフード販売会社に立ち入り 取引先の小売価格制限か」(2026年10月20日)(2026-10-21確認)
- 朝日新聞「高級ペットフード値引きを制限か、公取委が調査 背景にブランド化?」(2026年10月20日)(2026-10-21確認)
- 毎日新聞「ペットフードの値下げ禁止疑い 公取委、販売会社に立ち入り」(2026年10月21日)(2026-10-21確認)
- e-Gov法令検索「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号)(2026-10-21確認)
- 公正取引委員会「『流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針』の改正について」(2026年7月8日)(2026-10-21確認)
- 公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(2026-10-21確認)
- 公正取引委員会「株式会社ダンロップタイヤから申請があった確約計画の認定について」(2025年8月6日)(2026-10-21確認)
- 公正取引委員会「ルックスオティカジャパン株式会社から申請があった確約計画の認定について」(2026年8月6日)(2026-10-21確認)
- 公正取引委員会「確約手続に関する対応方針」(2026-10-21確認)
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