米国のキャットフード100商品調査、99%から鉛を検出——数字の読み方と日本の基準
執筆:ペトログ編集部
本記事は、米国の非営利団体クリーンラベル・プロジェクト(Clean Label Project)が公表した報告書とプレスリリースをもとに、ペトログ編集部が独自に構成・執筆したものです。この調査は米CNNなどが報じています。
この記事のポイント
- 米国の非営利団体が市販キャットフード100商品(62ブランド)を検査し、鉛が99%、カドミウムが96%、ヒ素が94%の商品から検出されたと発表した
- 報告書は検出濃度の実数を公開しておらず、規制値との比較もしていない。特定の商品が害を及ぼすかを判定する調査ではない
- 魚・魚介類を主原料とする商品は水銀が約18倍、ドライフードは鉛が約3倍など、たんぱく源やタイプによる差が報告された
- 日本にはペットフードの鉛・カドミウム・無機ヒ素・グリホサートの上限値があるが、今回の結果がそれを超えるかどうかは報告書からは判断できない
分かっていること・分かっていないこと


| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 米国の調査:分かっていること | 検出された商品の割合(鉛99%・カドミウム96%・ヒ素94%)、たんぱく源・タイプによる差(倍率) |
| 米国の調査:分かっていないこと | 濃度の実数、調査団体の「基準」の中身、商品ごとの検出値 |
| 日本の基準:分かっていること | 鉛・カドミウム・無機ヒ素・グリホサートには日本の上限値がある。水銀・DEHPには上限値がない |
| 日本の基準:分かっていないこと | 日本で売られている商品が、日本の上限値を超えるかどうか |
※Clean Label Project「Cat Food Category Report」(2026年10月2日公表)、FAMIC掲載「愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令」をもとにペトログ編集部が作成。
この記事は、毎日のキャットフードを選んでいる飼い主の方に向けたものです。結論から書きます。米国の非営利団体クリーンラベル・プロジェクトは2026年10月2日、市販のキャットフード100商品を検査し、ほぼすべての商品から鉛などの重金属が検出されたと発表しました。ただし、報告書が示しているのは「検出された商品の割合」と「商品どうしを比べた倍率」で、どのくらいの濃度だったのかという実数は公開されていません。日本で売られているフードが危険だと示す調査でもありません。何が分かり、何が分かっていないのかを、報告書そのものから整理します。
調査の概要——100商品を122種類以上の汚染物質で検査
調査したのは、米コロラド州に拠点を置く非営利団体クリーンラベル・プロジェクトです。報告書によると、62ブランド・100商品のキャットフードについて、重金属、農薬、プラスチック由来の化学物質など122種類以上の汚染物質を検査しました。内訳はドライ(カリカリ)が31商品、ウェット(缶詰・パウチ)が40商品、エアドライまたはフリーズドライが29商品です。分析は、ISO 17025の認定を受けた独立の分析機関が行ったとしています(機関名は非公開)。水分量の違う商品どうしを比べるため、結果は1,000キロカロリーあたりの量にそろえて比較されています。
主な結果——たんぱく源とタイプで傾向が分かれた
重金属は大半の商品から検出されました。鉛は99%、カドミウムは96%、ヒ素は94%の商品から見つかっています。差が大きかったのは、たんぱく源とフードのタイプです。魚・魚介類を主原料とする商品は、他の商品に比べて水銀が約18倍、カドミウムが約2.5倍でした。魚ベースのウェットフードに限ると、他のウェットフードの約28倍の水銀が検出されています。一方、ドライフードの鉛は、ウェットやエアドライの約3倍でした。除草剤のグリホサートは37%の商品から検出され、植物由来の原材料が1つ増えるごとに濃度が約40%高くなる傾向があったとしています。プラスチックを柔らかくするために使われるフタル酸エステルの一種(DEHP)は100商品中48商品から検出され、缶詰・パウチ入りの商品は袋入りの商品の約5倍でした。
たんぱく源×フードのタイプで見た傾向


| 組み合わせ | 報告された傾向 |
|---|---|
| 魚・魚介類ベース × ドライ | 鉛が高め、水銀・カドミウムも高め(他のたんぱく源に比べ、水銀は約18倍・カドミウムは約2.5倍) |
| 魚・魚介類ベース × ウェット | 水銀が特に高い(他のウェットの約28倍)、DEHPも高め |
| その他のたんぱく源 × ドライ | 鉛が高め(ウェット・エアドライの約3倍) |
| その他のたんぱく源 × ウェット | DEHPが高め(検出された商品では、袋入りの約5倍) |
※「ウェット」は缶詰・パウチ、「ドライ」はカリカリを指します。倍率は1,000kcalあたりの量の比較です。濃度の実数は公開されておらず、特定の商品の安全性を示すものではありません。Clean Label Project「Cat Food Category Report」(2026年10月2日公表)をもとにペトログ編集部が作成。
この調査が示していないこと
数字を受け取る前に、報告書に書かれていないことを確認しておく必要があります。1つ目は、濃度の実数です。報告書は「何%の商品から検出されたか」「何倍か」は示していますが、1グラムあたり何マイクログラムだったのかという値を公開していません。2つ目は、規制値との比較です。報告書は、猫に当てはまる基準がないことを理由に、規制値との比較をしていません。3つ目は、団体独自の基準の中身です。「家禽ベースの商品の84.8%が当団体の基準を満たし、魚・魚介類ベースでは25.7%だった」としていますが、その基準値や算出方法は報告書に書かれていません。4つ目は、検査の範囲です。各商品の検査は1つの製造ロットだけで、ロットごとの違いは分かりません。ヒ素は総ヒ素として測定されており、毒性が問題になる無機ヒ素を分けた分析ではありません。報告書には検査した100商品の名前が一覧で載っていますが、商品ごとの検出値は公開されていません。100商品をどのような基準で選んだのかも書かれていません。健康への影響についても、報告書は重金属の一般的なリスクに触れていますが、猫を対象にした研究を引用して影響を示しているわけではありません。
業界団体の見解と、調査団体の立場
同団体は2026年2月にドッグフードについても同様の調査を公表しています。このとき、米国のペットフードメーカーの業界団体ペットフード・インスティテュート(PFI)は声明を出し、検出できる量の重金属が含まれていること自体は健康リスクを意味しないこと、現在の分析技術では土壌・水・作物に自然に存在する微量の物質も検出できること、報告書が試料の採取方法や分析手順、商品別のデータを開示していないことを指摘しました。今回の猫用の調査について、PFI自身が公表した声明は本稿の執筆時点で確認できていません。CNNの報道によると、PFIは同社の取材に対し、メーカーは食品安全と品質保証のための包括的なプログラムを導入していると説明しています。調査団体の側の立場も押さえておく必要があります。クリーンラベル・プロジェクトは、基準を満たした商品を認証する事業を行っており、報告書には同団体の認証を受けたブランド名が掲載されています。報告書は、検査を独立の分析機関が行ったとしていますが、認証事業の収入や、認証ブランドとの金銭的な関係についての説明は報告書にありません。
モリー・ハミルトン氏(クリーンラベル・プロジェクト事務局長)のコメント
ハミルトン氏はプレスリリースの中で、飼い主は毎日与えているフードが安全だと信頼しているが、ラベルからは分からない情報が非常に多い、という趣旨の見解を示しています。
※上記は同団体のプレスリリースに掲載された発言の趣旨を、ペトログ編集部が間接話法で日本語に再構成したものです。正確な原文は出典一覧のプレスリリースをご参照ください。
経緯
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2026年2月 | クリーンラベル・プロジェクトがドッグフードの調査を公表。業界団体PFIが声明を発表(2月13日) |
| 2026年10月2日 | 同団体がキャットフード100商品の調査報告書とプレスリリースを公表 |
ペトログ考察:日本の飼い主はこの数字をどう受け止めればよいか
ここからはペトログ編集部の独自考察です。「99%から鉛」という数字だけを見ると不安になりますが、判断に必要なのは「どのくらいの量か」と「基準と比べてどうか」です。日本の基準と照らして整理します。
日本では、ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)にもとづく省令で、犬・猫用フードに含まれる汚染物質や農薬の上限値が定められています。今回の調査に関係する項目は、鉛が3μg/g、カドミウムが1μg/g、無機ヒ素が2μg/g、グリホサートが15μg/gです(独立行政法人農林水産消費安全技術センター〔FAMIC〕掲載「愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令」、参照2026-10-04)。上限値は、水分が10%を超えるフードでは、超える分の水分を除いた量をもとに計算します。
日本の成分規格(今回の調査に関係する項目)
| 物質 | 日本の上限値 | 今回の報告書の内容 |
|---|---|---|
| 鉛 | 3μg/g | 99%の商品から検出(濃度は非公開) |
| カドミウム | 1μg/g | 96%の商品から検出(濃度は非公開) |
| ヒ素 | 無機ヒ素として2μg/g | 総ヒ素として94%の商品から検出(濃度は非公開) |
| グリホサート | 15μg/g | 37%の商品から検出(濃度は非公開) |
| 水銀 | 規定なし | 魚・魚介類ベースの商品で高い傾向 |
| DEHP(フタル酸エステル) | 規定なし | 48商品から検出 |
※上限値はFAMIC掲載「愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令」(参照2026-10-04)、報告書の内容はClean Label Project「Cat Food Category Report」より、ペトログ編集部が作成。
考察1:「検出された」と「基準を超えた」は別の話
今回の報告書は濃度の実数を公開していないため、検出された量が日本の上限値を上回るのか下回るのかは、報告書からは判断できません。検査した商品の一覧には日本でも販売されているブランドの名前が含まれますが、商品ごとの検出値は公開されておらず、日本で流通している商品が検査された商品と同じ原材料・製造条件かどうかも確認できません。「99%から検出」は「99%の商品が危険」という意味ではなく、「調べた商品の99%から、検出できる量が見つかった」という意味です。この2つを分けて読むことが出発点になります。
考察2:水銀とDEHPは、日本でも上限値が定められていない
一方で、今回の調査で差が大きかった水銀と、約半数の商品から検出されたDEHPについては、日本の省令にも上限値の定めがありません。報告書の結果だけで健康への影響を判断することはできませんが、魚ベースのフードを毎日与えている飼い主にとっては、知っておいてよい情報です。基準がない項目について、メーカーが自主的にどこまで検査しているかは、商品によって異なる可能性があります。
考察3:飼い主にできること
報告書は飼い主に向けて、次のような対応を挙げています。魚ベースのフードだけを与えている場合は、ほかのたんぱく源のフードも取り入れること。原材料表示は最初の1つだけでなく、続く原材料まで読むこと。メーカーに対して、原材料だけでなく完成品についても重金属の検査をしているかを尋ねること。これらは調査団体の提案であり、獣医学的な指導ではありません。持病のある猫や療法食を食べている猫のフードを変える場合は、かかりつけの獣医師に相談してください。ペトログとしては、気になるフードがあれば、メーカーの公式サイトで検査体制の説明があるかを確認し、なければ問い合わせてみることをおすすめします。
飼い主にできること
- いま与えているフードの原材料表示を、最初の1つだけでなく最後まで読んでみる
- 魚ベースのフードだけを与えている場合は、ほかのたんぱく源を取り入れることを検討する
- 気になる点は、メーカーに完成品の検査体制を問い合わせる
- フードの切り替えに不安がある場合は、かかりつけの獣医師に相談する
大きな数字ほど、何を数えた数字なのかを確かめる価値があります。ペトログNEWSは、続報や日本の関係機関の動きがあれば、一次情報にもとづいてお伝えします。
出典・引用元一覧
- Clean Label Project, Cat Food Category Report(報告書), https://cleanlabelproject.org/wp-content/uploads/clean-label-project-cat-food-study-2026.pdf, (参照 2026-10-04)
- Clean Label Project, Heavy Metals Found in Up to 99% of Cat Food Products(調査ページ), 2026-10-02, https://cleanlabelproject.org/cat-food-study/, (参照 2026-10-04)
- Clean Label Project, New Cat Food Study Finds Heavy Metals Widespread and Major Differences by Protein Source(プレスリリース, EIN Presswire配信), 2026-10-02, https://world.einnews.com/pr_news/946718749/new-cat-food-study-finds-heavy-metals-widespread-and-major-differences-by-protein-source, (参照 2026-10-04)
- Pet Food Institute, Pet Food Institute Statement on Clean Label Project Dog Food Study(声明, Petfood Industry掲載), 2026-02-13, https://www.petfoodindustry.com/news-newsletters/pet-food-press-releases/press-release/15817220/pet-food-institute-statement-on-clean-label-project-dog-food-study, (参照 2026-10-04)
- CNN, What's in your cat's food? New investigation finds lead and other toxins(報道。PFIの取材回答に関する記述の出所), 2026-10-02, https://www.cnn.com/2026/10/02/health/cat-food-toxins-wellness
- 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC), 愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令, https://www.famic.go.jp/ffis/pet/hourei/sub1_seibunkikaku.html, (参照 2026-10-04)
この記事について
「ペトログ考察」セクションはペトログ編集部による独自の分析・意見であり、Clean Label Projectその他の出典元の見解を代表するものではありません。本記事は特定の商品の安全性を評価するものではなく、医療・診断に関する助言でもありません。愛猫の健康やフードの変更については、かかりつけの獣医師にご相談ください。
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