パピーミルとは?豪州の業者に禁錮9か月——日本のブリーダー規制と、子犬を迎える前に確かめること
オーストラリア西部のパースで2026年10月28日、子犬を大量に繁殖させていた男性に禁錮9か月の判決が出ました。いわゆるパピーミルの事件です。日本でも2021年に、ブリーダーの頭数や繁殖の年齢に上限を設ける基準ができました。
これから子犬を迎えたいと考えていて、「パピーミル」という言葉が気になった人へ。パースで何があったのか、日本のブリーダーにはどんな決まりがあるのか、迎える前に何を確かめられるのかを、法律と国の資料をもとにまとめました。
本記事の情報源
RSPCA WA(西オーストラリア州の王立動物虐待防止協会)が2026年10月28日に公表した発表、ABC News などの報道、西オーストラリア州の法律と州政府の資料、日本の動物愛護法・環境省令・環境省の資料をもとに、日本の読者向けにまとめています。
原文:Puppy farmer jailed for animal cruelty(RSPCA WA、2026年10月28日)
執筆:ペトログ編集部
目次
豪州パースのパピーファームの経営者に、禁錮9か月の判決
RSPCA WAによると、事件の発端は2024年12月です。市の職員から通報を受けたRSPCA WAの査察官が、パース近郊の飼育場所で105頭の犬を見つけました。ひどい毛玉や歯の病気、治療されていない病気が見られ、22頭は助けられずに安楽死となっています(ABC Newsによると、けんかでできたばかりの傷がある犬もいました)。RSPCA WAの調べでは、男性は2021年から2025年までに少なくとも390頭の子犬を繁殖させていました。
男性は2025年7月に動物虐待36件で有罪となりました。さらに2026年9月、命令違反2件でも有罪になっています。2025年8月に、犬をRSPCA WAに引き渡し、犬の持ち主を変えることを禁じる命令を受けたのに、その翌日にゴールデン・レトリーバーの子犬を売ったためです。パースの治安判事裁判所は10月28日、執行猶予のない禁錮9か月を言い渡しました。命令違反に対する罰金5,000豪ドルと、訴訟費用4,383豪ドルの支払いも命じています。
RSPCA WAの発表によると、判事は「パピーファームという営みは廃止されなければならない(The practice of puppy farming must be abolished)」と述べました。RSPCA WAの担当者は、犬たちが「繁殖の機械、売るための商品(breeding machines and products for sale)」としか見られていなかったと話しています。預かりボランティアの多くは、預かった犬をそのまま家族に迎えました。
出典:RSPCA WA(2026年10月28日発表)、ABC News(2026年10月28日)
パピーミル(パピーファーム)とは
オーストラリアのRSPCAは、パピーファームを「集約的な犬の繁殖施設(an intensive dog breeding facility)」で、犬に十分でない環境で運営されるものと説明しています。パピーファクトリー、パピーミルとも呼ばれ、日本語では「子犬工場」と訳されることもあります。
RSPCAは、パピーファームの問題として、食べ物や水、雨風をしのぐ場所が足りないこと、狭い場所に閉じ込めること、不衛生で過密な環境、獣医療を受けられないこと、さまざまな経験をする機会がないこと、無計画な繁殖で近親交配が起きることなどを挙げています。
日本の動物愛護法に「パピーミル」という言葉は出てきません。その代わりに、犬や猫を繁殖させて売る業者が守るべき基準を、数字で定めています。
出典:RSPCA Australia「What is a puppy farm?」、e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」
西オーストラリア州では、ペットショップで売れる犬を保護犬などに限った
西オーストラリア州の動物福祉法(Animal Welfare Act 2002)では、動物虐待の罪は1件につき最高で罰金5万豪ドルと禁錮5年です。有罪になった人に、裁判所は動物を飼うことなどを禁じる命令も出せます。期間は裁判所が決め、永久の禁止も認められています(今回の男性に出たかどうかは、RSPCA WAの発表には書かれていません)。
州は2021年12月、パピーファームをなくすための法律(Dog Amendment (Stop Puppy Farming) Act 2021)を成立させました。2025年5月26日からは、ペットショップが犬を売るには自治体の承認が必要になり、犬の仕入れ先も、州の承認を受けた保護施設などに限られています。南東部のビクトリア州でも、2018年7月からペットショップは承認を受けた保護施設などからしか犬を仕入れられません。
出典:Animal Welfare Act 2002(WA)(第19条・第55条)、西オーストラリア州政府「Stop Puppy Farming」、ビクトリア州首相(2017年12月15日発表)
日本のブリーダーの決まり——2021年からの数値規制
日本では、犬や猫を繁殖させて売る業者は、都道府県知事など(政令指定都市は市長)に第一種動物取扱業の登録をしなければなりません(動物愛護法第10条)。そのうえで、環境省令の基準を守る義務があります(第21条)。2021年6月1日に施行されたこの省令は、ケージの広さや頭数、繁殖の年齢などを数字で決めているため、「数値規制」と呼ばれています。
| 項目 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたりの頭数の上限 | 20頭(うち繁殖用は15頭) | 30頭(うち繁殖用は25頭) |
| ケージの大きさ | 縦は体長の2倍以上、横は1.5倍以上、高さは体高の2倍以上 | 縦は体長の2倍以上、横は1.5倍以上、高さは体高の3倍以上で、棚を付けて2段以上 |
| 交配させてよい年齢 | 6歳以下(7歳の時点で出産6回未満と証明できれば7歳以下) | 6歳以下(7歳の時点で出産10回未満と証明できれば7歳以下) |
| 生涯の出産回数 | 6回まで | 上限の定めはない |
注:「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」(令和3年環境省令第7号)第2条による。頭数には、親と同居する子犬・子猫と、繁殖を引退した犬猫は含まない。
このほか、長く飼う場合は運動できるスペースを設ける、帝王切開は獣医師が行い、出生証明書と診断書を5年間保存する、といった決まりもあります。交配の年齢と出産回数の上限は、すべての業者に2022年6月から適用されています。すでに登録していた業者には、ケージの大きさは1年遅れの2022年6月から当てはめられ、頭数の上限は段階的に引き下げて2024年6月から全面的に適用されました。
基準を守らない業者には、都道府県知事などが改善を勧告し、従わなければ命令を出せます(第23条)。命令に違反すると100万円以下の罰金で(第46条)、登録の取り消しや6か月以内の業務停止もありえます(第19条)。岐阜県(可茂保健所長)は2026年9月8日、ケージの大きさ・構造や飼っている頭数などが基準に合わず、勧告にも従わなかった販売業者に、改善の措置を命じました。
また、生まれて56日(8週)を過ぎない犬や猫を、繁殖した業者が販売のために引き渡したり展示したりすることは禁じられています(第22条の5。天然記念物に指定された犬を専門に繁殖する業者が、業者でない人に直接売る場合は、法律の附則の特例で49日)。
出典:環境省(2021年4月1日報道発表)、環境省「関連省令等の整備について(概要)」、環境省「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針」、e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」、岐阜県(2026年9月の発表)
子犬を迎える前に確かめたいこと——パピーミルの見分け方につながる決まり
ブリーダーやペットショップから子犬を迎えるとき、法律で業者に義務づけられていることは、そのまま確かめる手がかりになります。
- 店や犬舎に、業者の名前と登録番号などを書いた標識が掲げられているか(第18条)
- 買う前に、店や犬舎でその子を実際に見せてもらい、対面で、飼い方や生年月日、繁殖した人の名前などを書面(または電子データ)で説明してもらえるか(第21条の4)
- 生まれて56日を過ぎているか(第22条の5)
業者の登録は、都道府県や政令指定都市などの第一種動物取扱業者登録簿で、誰でも見ることができます(第15条)。また、繁殖業者には、母犬・母猫の交配の年齢と、母犬の出産回数の上限を守り、繁殖の記録を5年間残す義務があります。母犬の年齢や出産の回数、親犬がどこでどう暮らしているかを尋ねて、はっきり答えてくれるかどうかも、確かめておきたい点です。
出典:e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(第15条・第18条・第21条の4・第22条の5)、環境省「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針」
さいごに
パースの事件では105頭の犬が見つかり、22頭が安楽死となりました。RSPCA WAは、犬たちが「売るための商品」としか見られていなかったと指摘しています。日本では数値規制によって、従業員1人あたりに飼える頭数や、繁殖させてよい年齢に上限ができました。
決まりを守っているかどうかは、迎える側も確かめられます。子犬を家族に迎える前に、その子がどこで、どんな親から生まれたのかを聞いてみてください。
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出典
- RSPCA WA「Puppy farmer jailed for animal cruelty」(2026年10月28日発表。2026-11-02確認)
- ABC News(2026年10月28日の記事。2026-11-02確認)
- RSPCA Australia「What is a puppy farm?」(2026-11-02確認)
- Animal Welfare Act 2002(WA)、西オーストラリア州政府「Stop Puppy Farming」、ビクトリア州首相の発表(2026-11-02確認)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」、「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」(2026-11-02確認)
- 環境省(2021年4月1日報道発表)、環境省「関連省令等の整備について(概要)」、環境省「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針」(2026-11-02確認)
- 岐阜県「第一種動物取扱業者に対する措置命令」(2026-11-02確認)
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