猫の下部尿路疾患(FLUTD)・尿路結石ケアフード完全ガイド——予防から食事管理まで
執筆:ペトログ編集部
猫の下部尿路疾患(FLUTD)とは、膀胱・尿道・尿路を含む下部尿路に生じる疾患の総称で、尿路結石・特発性膀胱炎・尿道閉塞などが含まれ、猫に非常に多く見られる疾患群です。
特に尿路結石は食事管理との関係が深く、フード選びが予防・ケアに直結します。
この記事では、猫の下部尿路疾患(FLUTD)と尿路結石の基本知識、フードの選び方、日常的にできる予防習慣をペトログ編集部が解説します。すでに診断されている猫への療法食については必ず獣医師にご相談ください。
この記事でわかること
- 下部尿路疾患(FLUTD)とは何か
- ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の違い
- 「下部尿路ケアフード」「療法食」「維持食」の違い
- 下部尿路に配慮したフードを選ぶ4つのポイント
- 市販の下部尿路ケアフードのおすすめ商品
- 毎日できる予防習慣
下部尿路疾患(FLUTD)とは
FLUTD(Feline Lower Urinary Tract Disease)とは、猫の膀胱と尿道に起こる病気の総称です。具体的には以下の病気が含まれます。
- 膀胱炎(細菌性・特発性)
- 尿路結石症(ストルバイト・シュウ酸カルシウムなど)
- 尿道閉塞
このうちFLUTDの主な原因の上位3つが、尿石症・細菌性膀胱炎・特発性膀胱炎です。特に尿路結石は食事管理との関係が深く、フード選びが予防・ケアに直結します。
緊急サインを覚えておく
以下の症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。特にオスは尿道が細くカーブしているため、尿道閉塞が起きやすく命に関わります。
- トイレに何度も行くが尿が出ない・ほとんど出ない
- トイレ以外の場所での排尿
- 尿に血が混じる(血尿)
- 排尿時に鳴く・痛そうにしている
- 元気がない・食欲がない
2種類の尿路結石——ストルバイトとシュウ酸カルシウム
猫の尿路結石の90%以上を占めるのが、この2種類です。性質が正反対のため、それぞれへの対応が異なります。
ストルバイト結石
- できやすい条件:尿がアルカリ性に傾いているとき
- 発症しやすい年齢:1〜6歳の比較的若い猫
- 特徴:食事療法(療法食)によって溶かせる場合がある
- 主な原因:マグネシウム・リン・アンモニアが尿中で結晶化
シュウ酸カルシウム結石
- できやすい条件:尿が酸性に傾きすぎているとき
- 発症しやすい年齢:中〜高齢の猫(7歳以上)に多い
- 特徴:食事療法では溶かせず、外科手術が必要な場合もある
- 主な原因:カルシウムとシュウ酸が結合して結晶化
重要な注意点: ストルバイトを防ごうと尿を酸性に傾けすぎると、今度はシュウ酸カルシウムができやすくなります。そのため予防食では両方に対応した設計のフードを選ぶことが大切です。
3種類のフードを正しく使い分ける
下部尿路関連のフードは3種類に分けられます。それぞれの対象と目的を必ず確認してください。
① 下部尿路ケアフード(総合栄養食)
対象:健康な猫、または下部尿路が気になる段階の猫
市販で購入できる総合栄養食で、ミネラルバランスを調整して結石ができにくい設計になっています。予防・日常ケアが目的です。
② 療法食(処方食)
対象:下部尿路疾患・尿路結石と診断された猫(治療中)
動物病院でのみ処方・購入できるフードです。必ず獣医師の指導のもとで使用してください。 「FLUTDに配慮」と書かれていても療法食ではない商品があるため、パッケージの「療法食」表記を必ず確認しましょう。
③ 維持食
対象:治療が終わり症状が改善した後の猫(再発予防)
療法食から切り替えて、再発を防ぐために使用するフードです。こちらも獣医師の指示に従って使用してください。
下部尿路に配慮したフードを選ぶ4つのポイント
ポイント① ミネラルバランスが適切に調整されているか
猫の尿路ケアにとって理想的なミネラルバランスは、カルシウム:リン:マグネシウム=1.2:1:0.08とされています。このバランスが崩れると結石ができやすくなります。
特にマグネシウムはストルバイト結石の原因になるため制限が必要ですが、極端に少なすぎるとシュウ酸カルシウム結石のリスクが上がります。「低マグネシウム」だけを売りにしているフードよりも、総合的にミネラルバランスが調整されているフードを選びましょう。
ポイント② 尿pHが適切に保たれる設計か
ストルバイトはアルカリ性で、シュウ酸カルシウムは酸性で結晶化しやすいため、どちらも防ぐには尿pHを中性付近に保つ設計のフードが理想です。パッケージに「尿pH調整」「下部尿路の健康維持」と記載があるものを目安にしましょう。具体的な目標値は猫の状態によって異なるため、気になる場合は獣医師にご確認ください。
ポイント③ 水分摂取を増やせるか
結石は「結石の材料を溶かす液体(尿)が少ない」ことで形成されやすくなります。尿量を増やすことが最大の予防策のひとつです。
- ウェットフードを取り入れる(水分80%前後)
- ドライフードをぬるま湯でふやかして与える
- 自動給水器を設置して飲水を促す
ポイント④ 高品質なタンパク質が使われているか
高タンパクなフードは自然と飲水量を増やす効果があり、尿量の増加につながります。ただし、消化しにくい粗悪なタンパク源は尿のアルカリ化を促す場合があります。消化しやすい良質な肉・魚を主原料にしたフードを選びましょう。
市販の下部尿路ケアフードおすすめ商品
以下は、健康な猫または下部尿路ケアを日常的に意識したい猫向けの市販総合栄養食です。すでに尿路疾患と診断されている場合は必ず獣医師にご相談ください。
ユニ・チャーム AllWell 室内猫用 下部尿路の健康維持
特徴: 室内猫特有の運動不足・水分不足に配慮した設計。マグネシウムを制限し尿pHの適切な維持をサポート。国産で入手しやすく、継続しやすい価格帯が選ばれる理由です。
メディファス 下部尿路の健康維持(ペットライン)
特徴: 麻布大学獣医学部との共同研究をベースに開発された国産フード。マグネシウムとカルシウムの適正バランスと尿pH設計を両立し、20年以上の実績を持つ国産下部尿路ケアフードの定番です。
ヒルズ サイエンス・ダイエット 尿路の健康
特徴: 長期の研究データに基づいた設計で、動物病院でも推奨されることが多いブランドの市販版。ストルバイト・シュウ酸カルシウムの両方に配慮したミネラルバランスが特徴です。
ネスレ ピュリナ ワン 下部尿路の健康維持
特徴: 市販で手に入りやすく継続しやすい価格帯でありながら、ミネラルバランスを考慮した設計。普段の食事として手軽に下部尿路ケアを始めたい方に選ばれています。
ロイヤルカナン エイジングケア(12歳以上)
特徴: シニア猫向けに尿路の健康維持と腎臓ケアを両立した設計。7歳以上の猫のメインフードとして使いやすく、下部尿路と腎臓の両方をケアしたい方にも向いています。
毎日できる予防習慣
① とにかく水をたくさん飲ませる
尿量を増やすことが最大の予防です。水入れを複数箇所に置く、自動給水器を使う、フードの近くではなく少し離れた場所に設置するなど工夫しましょう。
② ウェットフードを取り入れる
ドライフードだけでは水分補給が不十分になりがちです。週数回でもウェットフードを取り入れるだけで総水分摂取量が大きく変わります。
③ じゃこ・煮干しの与えすぎに注意
カルシウムやマグネシウムが豊富なじゃこや煮干しは、与えすぎるとミネラルバランスを乱し結石の原因になることがあります。おやつとして少量であれば問題ありませんが、主食代わりには不向きです。
④ ストレスを減らす
特発性膀胱炎はストレスと深い関係があります。安心して休める場所の確保、適度な運動と遊び、多頭飼いの場合はトイレの数(頭数+1が目安)を十分に用意することが大切です。
⑤ 定期的な尿検査を受ける
尿路疾患は初期症状が分かりにくいことがあります。年1〜2回の健康診断で尿検査を受け、早期発見につなげましょう。
腎臓病との関係
尿路結石が長期間放置されると、尿路の閉塞や炎症が繰り返されることで腎臓へのダメージが蓄積し、慢性腎臓病の進行リスクが高まります。下部尿路疾患は「尿の問題」として単独で捉えるのではなく、腎臓の健康と合わせてケアする視点が大切です。
腎臓ケアフードについては、関連記事「猫の腎臓ケアフード完全ガイド」もあわせてご覧ください。
まとめ:水分と食事管理が予防の柱
下部尿路疾患・尿路結石を防ぐための基本は、十分な水分摂取とミネラルバランスが整ったフード選びの2点です。
毎日のフードをケアに配慮したものに変えるだけで、リスクを大きく下げることができます。ペトログには実際に下部尿路ケアフードを使った飼い主さんのリアルな口コミが集まっています。ぜひフード選びの参考にしてみてください。
重要: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療的なアドバイスではありません。愛猫が尿路疾患と診断されている場合や、健康状態に不安がある場合は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
📌 参考資料・出典
🔗 農林水産省「ペットフードの安全関係(ペットフード安全法)」:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/
🔗 農林水産省「ペットフード安全法 表示に関するQ&A」:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/p_qa/hyouji.html
🔗 ペットフード公正取引協議会「ペットフード安全法に基づく必要表示事項について」:https://pffta.org/label/required_safety_pet_food/
🔗 日本獣医腎泌尿器学会(JAVNU)「IRIS犬猫の慢性腎臓病の診断、ステージングおよび治療(2019年度版)」 ※尿路疾患と腎臓病の関連について:https://www.javnu.jp/guideline/iris_2019/